三越事件

三越事件とは

三越事件は、1982年に起こった老舗百貨店・三越に関する一連の不祥事を総称するものである。この事件は、三越のトップの社長が解任される事態へと発展し、当時の社会に大きな衝撃を与えた。事件の背景には、経営陣の権力闘争や、経営不正が絡んでいた。

事件の背景

事件は、1972年に岡田茂が三越の社長に就任したことから始まった。岡田は自らに対する批判を排除するため、幹部を左遷し、まるで独裁体制を築くかのような経営を行った。この独裁的な運営により、岡田は会社の経理を不透明にし、私物的な利用を進めていった。

特に、岡田のライバルであった常務の坂倉芳明を排除したことが、後に大きな波紋を呼ぶこととなる。坂倉はその後西武百貨店の副社長に就任し、その後再び三越に戻り社長となる運命を辿る。

岡田は、ジャーナリスト恩田貢を通じて知った竹久みちを愛人として大いに重用し、竹久はその影響力を活かして「三越の女帝」と称されるまでになった。

不正取引と贋作の発覚

1982年、週刊朝日が岡田社長と竹久に関する不正を報じた。この中で、三越が納入業者に対し商品購入を強要し、協賛金を求める行為が独占禁止法に違反しているとして公正取引委員会から審決を受けたことも浮かび上がった。

また、同年8月に開催された「古代ペルシア秘宝展」では、多くの出品物が贋作であることが明らかになった。このニュースは全国紙で取り上げられ、多くの考古学者が偽物であると断言したため、三越の信用は大きく損なわれた。中には、贋作に巨額の取引が成立していたものもいた。

三越はこの問題に対して、入手先を企業秘密とし、鑑定機関による検証を行うと発表したが、その後その鑑定機関は存在しなかったという事実が報道された。これにより三越はさらなる批判を浴びることとなる。

解任劇

贋作事件が明るみに出ると、三井グループからも圧力がかかり、岡田は退陣を勧告されたが、彼は強硬にこれを拒否した。1982年9月22日、取締役会において緊急の議題が提起され、岡田の解任議案が通過した。数名の取締役の起立によって、議案は16対0で可決され、岡田は即時に社長職を解かれた。岡田は解任に際して「なぜだ」と繰り返し叫び、その言葉は世間に広まることとなった。

後任社長には、岡田が排除した名古屋三越社長の市原晃が就任した。

刑事事件へ

岡田の解任後、竹久みちは税務署により脱税の容疑で逮捕され、さらに三越関連の幹部も逮捕されることとなる。岡田も特別背任の罪で逮捕され、後に懲役3年の実刑判決が下された。しかし岡田はこの上告中に他界することとなった。竹久は懲役2年6ヶ月の実刑判決を受け、その後服役するが、出所後に病で亡くなった。

文化的影響

この事件は多くのメディアに取り上げられ、経済小説やルポ作品、ドラマ、映画など、様々な形で描かれることとなった。三越事件は日本の商業界における不正や権力闘争の象徴的事例として、今なお語り継がれている。

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