三通

中国と台湾の三通：通商、通航、通郵の歴史と現状

1949年の国共内戦後、中国と台湾の間には深い政治的対立が存在し、両地域の交流は長らく断絶していました。この状況下で、中国側は台湾との交流促進策として「三通」すなわち「通商（貿易）」「通航（交通）」「通郵（郵便）」を提案しました。しかし、当時台湾は中国大陸に対して「不接触」「不談判」「不妥協」の三不政策を貫いており、この提案は受け入れられませんでした。

歴史的背景：断絶から限定的交流へ

中華民国政府が台湾に移転した1949年以降、政治的理由から両地域のあらゆる交流は遮断されました。台湾側は、1977年に「取締匪偽物品管理弁法」を制定するなど、中国大陸との交流を厳しく制限していました。1979年、中国大陸は「台湾同胞に告げる書」において三通の早期実現を提案しましたが、台湾の三不政策によって無視されました。

状況が変化し始めたのは1987年、台湾で戒厳令が解除された後です。台湾住民による中国大陸への観光や親族訪問が解禁されましたが、三通は依然として認められず、香港を経由する間接的な方法が採用されました。

三通の現状：経済的結びつきの深化

その後、両地域の経済交流は深まりました。特に、台湾企業による中国大陸への投資が急増し、三通への要望が経済界から強まりました。1997年の香港返還、1999年のマカオ返還は、特別行政区を経由した一種の三通を事実上発生させる結果となりました。

2008年7月に行われた調査では、台湾人の54％が中国大陸での就職に関心を示しており、上海、北京、深圳、蘇州などの経済成長著しい地域が人気であることが明らかになりました。この事実は、台湾と中国大陸の経済的結びつきの強さを示しています。現在、中国大陸に住む台湾人は100万人ともいわれ、台湾の輸出の約4割が中国大陸に依存している状況です。

小三通：限定的な三通の実施

2001年1月1日、中国福建省の廈門と台湾の金門島の間で客船の運航が開始され、「小三通」と呼ばれる限定的な三通が実施されました。その後、馬祖島と福州市馬尾区の間でも定期船の運航が始まりました。また、台湾の都市と金門空港を結ぶ航空便も増加し、それに合わせた連絡バスや船も運航されるようになりました。当初は、中国と台湾以外の国籍の人々の利用は制限されていましたが、現在は開放されています。

2003年には、両地域間の直行便が初めて開設されました。当初は台湾国民の利用に限られ、後に外国人にも開放されましたが、利用には厳しい制限がありました。現在では、外国人、台湾住民、中国大陸住民すべてが自由に利用できます。

三通の実現：政治状況の変化と経済的要請

両地域の経済交流の促進により、三通実現への民間からの要望はますます高まりました。2001年には、中国大陸と台湾が世界貿易機関（WTO）に加盟したことも、政府による三通拒否への反対意見の高まりに繋がりました。しかし、台湾の民主進歩党政権下では、台湾独立運動や反分裂国家法などの政治的対立により、三通実現は困難でした。

2008年、中国国民党の馬英九政権が誕生すると、対中政策が大きく転換しました。中国大陸からの観光客受け入れの緩和、春節や週末の直行チャーター便の大幅な増便などが承認されました。また、第三国籍者の利用も可能となりました。2008年末には、直行チャーター便の毎日運航、就航都市の拡大、貨物便の就航、航路の変更などが実現しました。海運についても、台湾11港、中国大陸63港の開放が行われました。郵便や送金についても、香港経由が廃止されました。2009年4月には、航空チャーター便の定期便化、犯罪捜査協力、金融の相互参入などが合意されました。これらの措置により、中国と台湾間の三通は、部分的ながらも現実のものとなりました。

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