三重交通サ2000形電車

三重交通サ2000形電車：北勢線を支えた付随車の変遷

三重交通サ2000形電車は、1960年から1962年にかけて7両が製造された付随車です。当初は三重交通の三重線で運用されていましたが、後に近畿日本鉄道を経て、現在は三岐鉄道北勢線で活躍しています。

誕生の背景

1959年、三重交通は湯の山温泉の観光開発を目的として、三重線にモ4400形と呼ばれる新型電車を導入しました。この電車は当時最新の技術を盛り込んだ意欲的な車両でしたが、特殊な構造から保守に手間がかかるという課題がありました。そこで、モ4400形の設計を基に、保守が容易な付随車を大量生産し、老朽化した木造客車を置き換えることになりました。これがサ2000形です。

車両の特徴

サ2000形は、モ4400形に準じた全金属製の車体を採用しており、アルミサッシが使用された近代的な外観でした。全長は11m級で、窓配置は1(1)D5D(1)1という構成で、扉間の側窓が1枚多いのが特徴です。妻面は切妻構造で、単独の付随車であるため貫通扉が設けられています。初期に製造された車両には通風機がありませんでしたが、後に製造された車両には妻面上部に押込式の通風機が設置されました。

台車は、モ4400形で好評だったNT-7が採用されました。これは、主電動機装架が不要で、ボルスタ部分の構造が異なるものの、モ4400形のND-106系とほぼ同じ構造のウィングばね式台車です。ブレーキは、在来の電動車に牽引されることを考慮し、非常弁付き直通空気ブレーキ（STEブレーキ）が採用されました。連結器は、当初はピン・リンク式でしたが、後に自動連結器に変更されました。

その後の変遷

サ2000形は、三重線で木造客車の置き換えに貢献し、モ4400形と共に主力車両として活躍しました。1964年に湯の山線が改軌されると、全車が北勢線に転籍しました。近鉄合併後には、サ140形に改番されました。

1977年からは、北勢線の近代化に伴い、総括制御運転に対応するため、一部の車両に運転台が新設されました。奇数番号の車両は西桑名側に、偶数番号の車両は阿下喜側に運転台が設けられ、制御車として運用されるようになりました。この際、ブレーキが自動空気ブレーキに改造され、後にHSC電磁直通ブレーキに再改造されました。1990年には、車体色が特殊狭軌線新標準色に変更されました。

2003年には、北勢線が三岐鉄道に移管され、サ2000形も同社の所属となりました。ワンマン化改造と新塗装への変更が実施されました。運転台が設置されていた車両は、再び付随車に改造され、3両編成の中間車として組み込まれるようになりました。

現在の活躍

現在、サ2000形は三岐鉄道北勢線の主力車両として、3両または4両編成で活躍しています。長年にわたり、北勢線の発展を支え続けてきた車両です。

参考資料

湯口徹『THE rail レイル No.40 私鉄紀行 昭和30年代近畿・三重のローカル私鉄をたずねて 丹波の煙 伊勢の径（下）』、エリエイ/プレス・アイゼンバーン、2000年
『関西の鉄道 No.40 2000 爽秋号 近畿日本鉄道特集 PartIX 名古屋・養老・特種狭軌線』、関西鉄道研究会、2000年
『鉄道ピクトリアル No.727 2003年1月臨時増刊号』、電気車研究会、2003年
鉄道友の会編『鉄道ピクトリアル 2003年12月臨時増刊号 車両研究 1960年代の鉄道車両』、電気車研究会、2003年

もう一度検索