三陸大気球観測所

三陸大気球観測所は、かつて岩手県大船渡市三陸町に存在した、宇宙航空研究開発機構（JAXA）宇宙科学研究本部（ISAS）の施設です。1971年から2007年まで、科学観測用大気球を用いた様々な科学観測や宇宙工学実験が行われていました。

概要

1965年、東京大学宇宙航空研究所（現在のISAS）に気球工学部門が設立されました。当初は茨城県大洋村や福島県原町で気球の放球が行われていましたが、より専門的な施設を必要としたため、1971年に岩手県三陸町に三陸大気球観測所が開設されました。

観測所は、気球を打ち上げるための飛揚場、指令管制棟、受信棟、気球組立棟、そして大窪山観測棟などで構成されています。飛揚場の広さは、長さ約150m、幅約30mです。飛揚場の一角には指令管制棟と気球組立棟があり、ここでは放球の準備、観測機器の調整、そして放球に必要な指令が行われます。受信棟と、飛揚場から南西に約4km離れた山頂にある大窪山観測棟では、飛行中の気球からの電波を受信します。また、大窪山観測棟からは気球に指令電波を送り、観測機器を操作したり、気球の飛行を制御することも可能です。

開設から2007年までに、合計413機もの大気球が三陸大気球観測所から放球されました。しかし、施設の運用にはいくつかの課題がありました。まず、気球のサイズには制約があり、大型の気球を運用するには安全性の確保が難しかった点が挙げられます。また、気球が海上に出るまでの経路には、民家や国道、鉄道などが存在しており、これらの上空を通過する際の安全対策も必要でした。さらに、施設の建設当初と比較して偏西風が北上してしまい、長時間の気球飛行に不可欠な安定したジェット気流が得られにくくなったことも問題でした。

これらの問題点を考慮した結果、三陸大気球観測所は2007年に閉鎖されました。その後、大気球観測所の機能は北海道大樹町にある大樹町多目的航空公園に移転しました。

参考資料

三陸大気球観測所 -JAXA
大気球で新しいチャレンジ(吉田哲也) -JAXA
西村, 純『気球をとばす』岩波書店、1975年。ISBN 4001152045。

関連項目

気象ロケット観測所 -位置的に近い場所にある

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