三陸浜街道

三陸浜街道

三陸浜街道は、現在の国道45号に相当する区間の旧街道のうち、宮城県気仙沼市から三陸海岸を縦断し、青森県八戸市に至る街道を指します。この街道は、かつて仙台藩、盛岡藩、八戸藩の三つの藩の領域を跨ぎ、それぞれの藩の歴史や文化が色濃く残る道筋です。

概要

浜街道は、仙台藩、盛岡藩、八戸藩にまたがる脇街道の総称です。その中でも、宮城県気仙沼市から青森県八戸市までの区間は、三陸復興国立公園に指定されるほどの景勝地が連なっています。地形的には、岩手県宮古市の閉伊川を境に、北側は海岸段丘が発達し、南側はリアス式海岸となっています。この変化に富んだ地形が、街道の魅力を一層引き立てています。

各藩の領域における街道

仙台藩領

仙台藩の記録である「奥州仙台領中道程記」には、相馬境から唐丹（釜石市）境までを「浜道筋」と記しています。仙台城の城下町である北目町から気仙郡に至る街道は、「南部海道」や「気仙道」とも呼ばれていました。仙台藩と南部藩の境には石塚峠があり、峠の入口にはそれぞれ本郷御番所と平田御番所が設けられていました。

南部藩領

南部藩では、寛永18年（1641年）に街道の改修工事と七里塚の建造を命じ、慶安2年（1649年）には「海辺道」と呼ばれていたことが記録されています。この道は太平洋岸の海岸通りを経由しており、主要なルートとして機能していました。

主な経由地は、平田坂石塚境目、平田、釜石、大槌、山田、宮古、小本、普代、野田、大川目（現・久慈）、種市、八戸、百石、平沼、尾駮、白糠、猿ヶ森、尻森、尻屋、大畑、大間、長後など、多くの集落を結んでいました。

盛岡藩領

寛文4年（1664年）に八戸藩が分立すると、九戸郡野田村（盛岡藩領）と久慈（八戸藩領）が藩境となり、藩境には塚が築かれました。盛岡藩領の東海岸は「東浜街道」または「三閉伊通」と呼ばれ、現在の釜石市から久慈市にかけて海岸線に沿って整備されていました。宮古湊があった鍬ヶ崎浦や代官所のある宮古村は、閉伊川の河口に開け、海産物の移出や東北太平洋岸海運の要所として賑わっていました。寛永年間には宮古街道（閉伊街道）も整備され、盛岡の外港として重要視されました。

宿場と伝馬継所

天和年間（1681年～1683年）の記録である「封内貢賦記」によると、以下の場所が宿場や伝馬継所として機能していました。これらの場所は、現在の岩手県内に位置しています。

釜石（釜石市）
大槌（上閉伊郡大槌町）
山田（下閉伊郡山田町）
豊間根
津軽石（宮古市）
宮古
崎山
田老
乙部
摂待
小本（下閉伊郡岩泉町）
大芦
田野原（下閉伊郡田野畑村）
普代（下閉伊郡普代村）
野田（九戸郡野田村）
久慈（久慈市）

八戸藩領

久慈から八戸城下へは、山間の道である「久慈街道」が本道として利用されていました。その他にも、「浜街道」と呼ばれる二つの道があり、一つは種市中心部の南、鹿糠から山手の城内地区に入り、そこから八戸に至る「新井田街道」であり、もう一つは、海岸沿いの各集落を北上し、八戸城下に至る「海岸通り」でした。当初は「新井田街道」が主要道でしたが、幕末期には鉄や塩の流通拡大、港湾利用の増加により、「海岸通り」が主要道となりました。明治以降、「新井田街道」が国道に編入され、海沿いの街道と並行して国鉄八戸線が敷設されたことで、街道の役割は大きく変化しました。

三陸浜街道の成立

「三陸浜街道」という名称が使われるようになったのは明治時代に入ってからです。明治14年の記録では、三等国道として、宮城県下気仙沼を経て岩手県に入り、三陸海岸を経由して青森県下に通ずる沿岸郡村の陸上交通線の総称として扱われ、現在の国道45号にほぼ合致しています。

明治時代の伝馬継所

明治14年（1881年）の記録によると、三等国道「浜街道」には以下の伝馬継所が設けられていました。

気仙
氷上（陸前高田市）
盛（大船渡市）
吉浜（気仙郡三陸町）
小白浜（釜石市唐丹町）
釜石
大槌（上閉伊郡大槌町）
船越（下閉伊郡山田町）
山田
津軽石（宮古市）
宮古
田老
小本（下閉伊郡岩泉町）
田野原（下閉伊郡田野原村）
普代（下閉伊郡普代村）
宇部（久慈市）
久慈
種市（九戸郡洋野町）
* 八戸

三陸浜街道は、その歴史と美しい景観から、多くの人々に愛されてきました。この街道を辿ることで、地域の歴史や文化、そして自然の美しさを感じることができるでしょう。

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