上ノ橋 (岩手県)

盛岡の歴史を繋ぐ、上の橋

上の橋は、岩手県盛岡市に位置する、長さ57メートル、幅12メートルの橋です。中津川に架かり、盛岡の歴史と深く結びついています。

概要

上の橋は、南部氏によって架設された木造土橋であり、奥州道中、現在の国道にあたる松前街道の重要な橋でした。三戸（現在の青森県三戸町）を本拠としていた南部氏が、不来方（こずかた、現在の盛岡市）に拠点を移し、その2年後には藩主、南部信直が居を移しました。盛岡は、北上川、雫石川、中津川が合流する、川に囲まれた要害の地であり、城下町を整備するにはこれらの川への架橋が不可欠でした。

慶長14年（1609年）から中津川への架橋が始まり、上の橋が架けられました。橋には創建時に擬宝珠がつけられ、今日まで大切に受け継がれています。上の橋の普請は、大奉行の七戸隼人正直時、普請奉行の野田弥右衛門、弓鉄砲同心頭の目時左馬助らが担当し、大工として美松長門らの名が伝えられています。

盛岡はこれまで度重なる洪水に見舞われ、橋も幾度となく流失しましたが、その度に架け替えられてきました。現在の上の橋は昭和10年（1935年）に架けられたもので、高欄は昭和47年（1972年）に取り替えられたものです。

歴史

盛岡の地は、北上川に雫石川と中津川が合流する、川に囲まれた要害の地であり、町づくりには川への架け橋が必須でした。盛岡城下の整備に目途がついた慶長14年から中津川への架け橋が始められ、上の橋が架けられました。

上の橋の普請を担当したのは、七戸隼人正直時、野田弥右衛門、目時左馬助らで、大工として美松長門らの名前が伝えられています。

江戸時代、盛岡は平均して6年に1回大洪水に見舞われ、上の橋もしばしば流失しました。天保3年（1646年）には橋が流され、慶安2年（1649年）には損傷を受けました。寛文2年（1662年）にも流失し、溺死者は数百人にのぼりました。寛文10年（1670年）の洪水でも流失し、寛文年中の洪水では擬宝珠も流されました。明治時代に入ってからも明治6年、8年、そして43年の洪水によって流失しています。

現在の橋は昭和10年に架けられたもので、高欄には檜材が使われました。昭和47年に取り替えられたときには県内産のヒバ材が使われ、維持管理上から濃いセピア色のペンキが塗られました。しかし、景観上そぐわないとして市民からの苦情が相次ぎ、塗ったばかりのペンキを剥がし、透明な塗料に変えて木肌が見えるようにしました。

擬宝珠

上の橋には創設時に擬宝珠がつけられ、これらが今日まで大切に受け継がれています。上の橋の擬宝珠は、南部氏の居城のあった三戸城下の熊原川黄金橋の擬宝珠を鋳直したものとされ、元の擬宝珠は京都・鴨川の橋の擬宝珠を移したものという言い伝えがあります。現在の上の橋の高欄部には18基の擬宝珠がつけられており、そのうちの8基には「慶長十四己酉十月吉日中津川上之橋 源朝臣利直」という銘が入れられており、他の10基には「慶長十六辛亥年八月吉日 中津川中之橋 源朝臣利直」の紀年銘があります。

洪水などによって失われた擬宝珠はそのつど補充されましたが、紀年銘は当初の通りにされたため、どの擬宝珠がいつ鋳造されたものかわかりにくくなっています。昭和45年に行われた詳しい調査の結果、現在の上の橋の擬宝珠のうち慶長14年当初のものは5基のみで、慶長16年当初のものは9基残されているとされ、他のものは寛文10年の洪水以降に補充されたもの、享保9年の洪水以降に鋳造されたものと推定されています。

上の橋は、盛岡の歴史を今に伝える貴重な文化遺産です。盛岡を訪れた際には、ぜひ足を運んでみてください。

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