上井兼政

上井兼政について

上井兼政は、安土桃山時代に活躍した武将で、島津氏の家臣でした。1571年、上井秀秋の次男として生まれました。幼少の頃から武術に秀で、その勇敢さから、島津義弘の家臣として日向国小林の地頭を任されました。

朝鮮出兵と庄内の乱

兼政は、文禄・慶長の役（朝鮮出兵）にも義弘に従い、小林衆20名を率いて渡海しました。その後、1599年に伊集院忠真が起こした庄内の乱では、鎮圧軍の一員として出陣しました。小松ヶ尾での戦いでは、平田増宗が退却する中、兼政はわずか6人の家臣と共に敵を防ぎました。激戦の中、兼政は傷を負いながらも奮戦し、敵将である松永五左衛門がその姿に恐れをなして鉄砲を持ったまま通り過ぎてしまうほどでした。しかし、志和池郷小谷頭（現在の都城市志和池）において、三俣院梶山の武士である谷口伊予に鉄砲で討たれ、壮絶な最期を遂げました。

死後の逸話と墓

兼政は幼少期、飯野（現在の宮崎県えびの市）の長善寺で教育を受けました。そのため、死後は小林郷内で長善寺の鐘の音が聞こえる場所へ葬ってほしいと遺言していました。その遺言に従い、飯野との境の地（現在の小林市南西方平木場）に葬られ、その墓は「仲五塚」として今も残っています。

奇妙な出来事

『庄内軍記』や『庄内陣記』によると、谷口伊予は兼政の首級を討ち取りましたが、北郷勢に横から攻められたため、首級を街道に捨ててしまいました。すると、見慣れない童子がその首級を持って、野々美谷城の傍にある諏訪神社の神前に現れたのです。神社の社人である二了（または二立）の妻がこれを発見し、「神は穢れを嫌うので、社殿に近づかないように」と告げました。童子は何も言わずにただ笑い返したそうです。不思議に思った妻が二了にこの話を伝えたところ、二了が社殿に向かうと童子の姿はなく、社壇の床下に兼政の首級があったと伝えられています。

子孫

兼政の嫡子である兼安の代から、先祖の姓である「諏訪」を名乗るようになりました。

参考資料

『本藩人物誌』 鹿児島県史料集（13）（鹿児島県史料刊行委員会）
『庄内軍記』（都城史談会）
『島津史料叢書 6』「庄内陣記」（新人物往来社）
『小林市史』（第一巻、第三巻）（小林市史編さん委員会）
* 『後陽成天皇紀』（慶長四年自九月二日至同三十日）

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