平田増宗

平田増宗：島津家を支えた老中、その波乱の生涯

平田増宗（ひらた ますむね）は、戦国時代から江戸時代初期にかけての武将で、薩摩国島津氏の家老・老中として重きをなしました。平田氏は薩摩の名族であり、増宗はその嫡流として生まれました。祖父、父と同様に島津義久に仕え、家老、そして老中へと昇進し、島津家の中枢で活躍しました。

地頭としての活躍

増宗は、武将としての才能も高く、日向国穆佐（現在の宮崎県宮崎市高岡町）の地頭を務めた後、慶長4年（1599年）頃からは入来院清敷郷（現在の鹿児島県薩摩川内市入来）の地頭に任じられました。また、合戦にも積極的に参加し、天正13年（1585年）の肥後堅志田城攻めや、慶長4年（1599年）の庄内の乱などに出陣しています。これらの戦を通して、増宗は武将としての経験と実績を積み重ねていきました。

関ヶ原の戦いと増宗の活躍

慶長3年（1598年）には大坂詰めを命じられ、その最中に天下分け目の関ヶ原の戦いが勃発しました。この戦いで、増宗は実窓院（島津義弘夫人）と亀寿（義久末娘で島津忠恒夫人）を薩摩国へ逃がすという重要な任務を担いました。増宗は、相良長泰・吉田清孝・上原尚張らと協力し、亀寿を侍女の於松とすり替えるという大胆な作戦を成功させ、無事に二人を薩摩へ逃がしました。この功績は、増宗の知略と行動力を示すものとして高く評価されています。

琉球侵攻と増宗の死

慶長14年（1609年）には、琉球侵攻における副将を務め、島津家の勢力拡大に貢献しました。しかし、その翌年、慶長15年（1610年）に、増宗は悲劇的な最期を迎えます。家久（忠恒）が川内の久見崎港から船で上京するのを見送った後、本貫地である郡山へ向かう途中、土瀬戸越（現在の入来峠付近）において、家久の命を受けた押川公近によって射殺されました。

上意討ちの背景

増宗が上意討ちにあった理由は、公式には明らかにされていません。しかし、当時、増宗が庄内の乱を引き起こした伊集院忠真に加担したという噂や、家久を廃して島津久信（義久次女の子）に家督を継がせようと、徳川家康から朱印状を得たという噂がありました。これらの噂が事実かどうかは定かではありませんが、島津家内部の家督問題をめぐる対立が、増宗の死を招いた一因となったことは想像に難くありません。

増宗一族の悲劇

増宗の死後、その一族も悲劇に見舞われます。長男の新次郎宗次は、家久が日向国で狩りを行った際に伊集院忠真と共に射殺されています。次男の新三郎行宗は、船が転覆した際に自殺したと伝えられています。さらに、三男は父に連座して琉球へ流刑、四男は硫黄島へ流刑となりました。実弟の越前守宗親も切腹を命じられ、その子らも処刑されました。これにより、平田氏の嫡流は断絶することになりました。しかし、庶流は薩摩藩士として存続し、その血脈は今日まで受け継がれています。

まとめ

平田増宗は、島津家のために尽力した武将であり、その知略と武勇は多くの場面で発揮されました。しかし、島津家内部の権力闘争に巻き込まれ、悲劇的な最期を遂げました。増宗の生涯は、戦国時代から江戸時代初期にかけての武士の生き様、そして大名家の複雑な内情を私たちに伝えてくれます。

参考文献

『本藩人物誌』 鹿児島県史料集（13）（鹿児島県史料刊行委員会）
『上井覚兼日記』 東京大学史料編纂所 （岩波書店）
* 『さつま人国誌 戦国・近世編 2 』 桐野作人著（南日本新聞社 2013年）ISBN 978-4-86074-206-5

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