上月景貞

上月景貞

上月 景貞（こうづき かげさだ）は、戦国時代から安土桃山時代にかけて活躍した武将です。播磨国佐用郡上月城主として知られ、備前国の大名・宇喜多氏の家臣でした。

出自

上月氏は、室町時代を通じて四職や播磨国などの守護を務めた有力守護大名家、赤松氏の分流にあたります。鎌倉時代には既に赤松氏の分家として存在が認められ、播磨佐用郡の上月城を居城として、その一帯を支配していたと伝えられています。しかし、赤松氏が一時的に勢力を失う原因となった嘉吉の乱（1441年）の際に、上月氏もまた所領を失いました。後に赤松氏は播磨に復権しますが、上月城は赤松氏の分家出身である赤松政元が支配するところとなりました。

景貞は、上月景勝（采女）の子として誕生しました。

生涯

成長した景貞は、備前国の戦国大名・宇喜多直家に仕えました。私生活では、東播磨の豪族で赤松氏の重臣を務めた家柄の櫛橋伊定の長女（妙寿尼）を室に迎えています。この妙寿尼の妹は、後に豊臣秀吉の軍師として名を馳せる黒田孝高（官兵衛）に嫁いでおり、これにより景貞と黒田孝高は相婿（あいむこ）の関係となりました。

上月城の攻防

景貞の生涯における主要な舞台となったのが、故地である上月城を巡る攻防戦です。

天正5年（1577年）12月、当時の上月城主であった赤松政範（赤松政元の子）は、周辺の豪族たちが織田信長に従う姿勢を見せる中で、毛利氏と連携して織田氏に敵対する道を選びました。政範は毛利方の宇喜多氏から援軍を得て織田軍に抵抗しましたが、織田信長の配下である羽柴秀吉（後の豊臣秀吉）軍の猛攻を受け、城は陥落し政範は敗死しました。

上月城は羽柴軍に占領され、その城番には、かつて毛利氏によって主家を滅ぼされた旧尼子氏の家臣・山中幸盛（鹿介）が任命されました。幸盛はこれを尼子氏再興の好機と捉え、当時京都にいた尼子氏の庶子・尼子勝久を城に迎え入れました。その後、尼子軍と宇喜多軍の間で上月城を巡る激しい奪い合いが繰り返されました。

天正6年（1578年）1月、宇喜多軍は主力部隊を投入して上月城への総攻撃を開始します。形勢不利と見た山中幸盛は、羽柴秀吉と協議の上、一時城を放棄して撤退することを決定。上月城は再び宇喜多軍の支配下に入りました。

宇喜多直家は、かつて上月城を領した上月氏の出身である景貞をこの重要な城の守将に任じます。副将には家臣の矢島五郎七が付けられ、景貞は自身の手勢と合わせて約2,000の兵を率いて上月城に入城しました。

同年3月、羽柴秀吉は自らの本隊に尼子軍を加え、さらに別働隊を編成して再び上月城を包囲しました。景貞は宇喜多氏に援軍を要請しつつ、城兵を率いて懸命に防戦にあたりました。しかし、宇喜多氏から援軍として派遣されていた寄騎の江原親次（兵庫助）が羽柴軍に内通するという事態が発生し、城内は混乱を極めました。景貞も親次に射撃され負傷してしまいます。この隙を突き、山中幸盛や羽柴軍の小寺孝高（黒田孝高）らが率いる軍勢が城内に突入したため、景貞はもはや防ぎきれないと悟り、城を脱出しました。

景貞は同郡の櫛田まで逃れましたが、そこで自刃して果てたと伝えられています。上月城は再び尼子軍が入りましたが、その後毛利軍も加わった上月城の戦いによって、尼子勝久らが自害し尼子氏は完全に滅亡することとなります。

落城後の家系

景貞の没後、その室と二人の遺児は、妻の妹の夫にあたる黒田孝高（官兵衛）によって手厚く保護されました。娘は後に小早川秀秋の家老を務めた平岡頼勝の室となりました。男子である正好（じろべえ）は黒田家に家臣として召し抱えられ（禄高約2,800石）、黒田氏に改姓して黒田長政の旗本を務めました。正好は文禄の役（1592-1593年）に参陣し、文禄元年（1592年）の平壌における大同江での戦闘で敵の矢を受けて戦死しましたが、一人の男子がおり、元服後に景好（いちえもん）と称して福岡藩士となりました。

また、『上月城物語』の著者・竹本春一の説によれば、景貞には清景（右衛門佐）という名の男子が別にいたとされています。清景は天正6年（1578年）の上月城落城後、一族とともに姫路へ移住したとされ、父・景貞と敵対した羽柴秀吉に配慮し、国府着（こうづき）氏と改姓したというのです。その子の満景（新左衛門尉）は天正10年（1582年）、当時の姫路城主であった羽柴秀吉の命により播磨国総社（射楯兵主神社）の神職となりました。以来、国府着家は代々神職を務めつつ姫路藩士も兼ね、家系は明治維新まで存続したと伝えられています。

関連作品

NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」（2014年）に登場しています（演：土平ドンペイ）。

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