上杉禅秀の乱

上杉禅秀の乱とは

上杉禅秀の乱は、室町時代の応永23年（1416年）に関東地方で勃発した大規模な戦乱です。この乱は、前関東管領であった上杉氏憲（うえすぎ ぜんしゅう）が、鎌倉公方の足利持氏（あしかが もちうじ）に対して起こした反乱であり、室町幕府をも巻き込む大きな騒動へと発展しました。

乱の背景

鎌倉府と関東管領

鎌倉府は、室町幕府が関東地方を統治するために設置した機関であり、鎌倉公方がその長を務めていました。関東管領は、鎌倉公方を補佐する役職であり、上杉氏が代々世襲していました。当初、関東管領は山内上杉家が務めていましたが、応永18年（1411年）に犬懸上杉家の上杉氏憲が就任したことで、鎌倉府内の勢力図が大きく変動しました。

上杉氏憲の台頭と失脚

上杉氏憲は、足利持氏の叔父にあたる足利満隆（あしかが みつたか）や、その養子である足利持仲（あしかが もちなか）と親密な関係を築き、若い持氏に代わって鎌倉府の実権を掌握しようと画策しました。しかし、応永22年（1415年）に持氏との対立が表面化し、氏憲は関東管領を罷免され、山内上杉家の上杉憲基（うえすぎ のりもと）が後任として任命されました。

乱の勃発と展開

挙兵

関東管領を罷免された上杉氏憲は、足利満隆・持仲らと共謀し、岩松満純（いわまつ みつずみ）や那須資之（なす すけゆき）など、自身の縁戚や各地の国人衆を糾合して、応永23年（1416年）に足利持氏に対して反旗を翻しました。

鎌倉制圧

同年10月、足利満隆が挙兵し、氏憲と共に鎌倉を制圧しました。持氏方は混乱し、持氏は家臣に連れられて鎌倉を脱出しました。氏憲らは、持氏を支持する武将が鎌倉に不在の隙を突いて挙兵したと考えられています。

室町幕府の介入

この事態を重く見た室町幕府は、将軍足利義持（あしかが よしもち）の命により、今川範政（いまがわ のりまさ）や上杉房方（うえすぎ ふさかた）らに氏憲討伐を命じました。幕府軍は駿河から関東へ進軍し、氏憲勢力を圧倒しました。

乱の終結

劣勢となった上杉氏憲は、持氏の殺害を試みて駿河を攻めますが、今川氏に敗れ、武蔵でも上杉氏らに押された江戸氏や豊島氏らの武士団が呼応して武蔵から氏憲勢力を排除しました。応永24年（1417年）正月、氏憲は鎌倉雪ノ下で足利満隆、足利持仲らと共に自害し、乱は終結しました。

乱後の影響

室町幕府の混乱

上杉禅秀の乱は、室町幕府内部にも大きな波紋を広げました。足利義持の弟である足利義嗣（あしかが よしつぐ）が出奔し、上杉氏憲と内通していた疑いが浮上するなど、幕府内の権力闘争が激化しました。

鎌倉府の動揺

乱後、鎌倉公方の足利持氏は、幕府からの自立を強める一方で、禅秀方についた大名らへの報復を行いました。また、奥州南部の統治を任されていた篠川公方（しのかわくぼう）足利満直（あしかが みつなお）が鎌倉府からの自立を図るなど、鎌倉府の内部も大きく動揺しました。

関東の騒乱へ

上杉禅秀の乱は、その後の永享の乱や結城合戦など、関東地方におけるさらなる騒乱の引き金となりました。鎌倉府と室町幕府の対立、関東管領家の内紛などが複雑に絡み合い、関東地方は長きにわたって戦乱の時代を迎えることになります。

上杉禅秀の乱は、室町時代の政治情勢、特に鎌倉府と室町幕府の関係、関東地方の武士勢力の動向を理解する上で重要な出来事と言えるでしょう。

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