上松義豊

上松義豊（あげまつ よしとよ/うえまつ よしとよ）

上松義豊は、安土桃山時代に活躍した武士であり、藤原姓木曾氏の庶流である上松氏の出身とされています。信濃国木曽郡の国人である木曾義康の子として生まれました。

生涯

上松氏は、木曾氏十四代当主・木曾家賢の弟である家信が上松に居を構えたことに始まるとされ、義豊は上松氏の家督を継いだと考えられます。

天正10年（1582年）2月、織田信長の甲州征伐において、兄の木曾義昌が武田勝頼を裏切り織田信長に味方した際、義豊は人質として織田氏の家臣である菅屋長頼のもとに送られました。この時、彼は人質としての立場を余儀なくされました。

その後、義豊は小笠原内蔵助と名を変えます。しかし、木曾氏の記録によれば、義昌の跡を継いだ甥の木曾義利との関係は非常に悪く、険悪な状態でした。義豊は、義昌が信長から拝領した「鈴虫」の轡を奪い取ったことが原因で、慶長元年（1596年）に義利によって殺害されるという悲劇的な結末を迎えました。

この事件は、慶長5年（1600年）に徳川家康の怒りを買い、家康の関東移封によって信濃木曽谷から下総国海上郡阿知戸1万石の所領を没収され、木曾氏が改易されるという事態を招きました。義豊の死は、木曾氏の命運を大きく左右する出来事となったのです。

人物

上松義豊は、武士としてだけでなく、一族内での複雑な人間関係にも翻弄された人物でした。特に、甥の義利との不仲は、彼の人生を大きく左右するだけでなく、木曾氏の歴史にも大きな影響を与えました。

関連作品

伊東潤の小説『木曾谷の証人』（『戦国鬼譚　惨』収録の短編）では、上松義豊の生涯が描かれています。この作品を通じて、彼の人物像や当時の社会情勢を深く理解することができます。

まとめ

上松義豊は、戦国時代から安土桃山時代にかけての動乱期を生きた武士であり、その生涯は、木曾氏の盛衰と深く結びついています。彼の行動や選択は、一族の運命を大きく左右し、歴史の転換点における武士の生き様を今に伝えています。

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