木曾義昌

木曾義昌

木曾義昌（きそ よしまさ）は、戦国時代から安土桃山時代にかけての武将、大名であり、信濃国木曾谷を領有した木曾氏の第18代当主です。幼名を宗太郎といい、左馬頭、伊予守を称しました。父は木曾義康、弟に上松義豊がいます。正室は武田信玄の娘である真竜院（真理姫）で、子に千太郎、義利、義春、義通、娘（毛利高政正室）などがいます。

生涯

出自と武田家への降伏

木曾氏は、源義仲の嫡流を自称する名門でしたが、その系図は南北朝時代に作成されたとする説もあります。天文9年（1540年）、木曾義康の嫡男として生まれました。当初は小笠原氏や村上氏らと共に武田信玄の侵攻に対抗しましたが、弘治元年（1555年）に降伏しました。

木曾氏が美濃・飛騨との国境地帯を抑えていたことから、信玄は義昌に娘の真理姫を娶らせ、親族衆として木曽谷を安堵しました。しかし、実際には家臣や親族を人質として甲府に送り、木曽の統治は武田家の監視下で行われました。これにより木曽谷は、武田家の美濃や飛騨への侵攻における最前線基地となりました。永禄3年（1560年）には、御嶽山に登拝し崇敬したことが知られています。

武田家への従属と転換

元亀3年（1572年）秋、信玄は西上作戦のため、義昌に長坂峠を越えさせ、飛騨に侵攻させました。この戦いで、土豪の檜田次郎左衛門尉が戦死しましたが、義昌の功績により、家臣の山村良利とその子に美濃の地が与えられました。天正元年（1573年）には美濃国恵那郡の河折籠屋を攻め落とし、苗木城を攻撃しました。翌年には武田信玄の命により阿寺城を攻め落とし、城主を討ち取り、付近の神社仏閣を焼き討ちしました。

信玄の死後、武田家の衰退に不安を抱き、義兄である武田勝頼の重税に不満を募らせた義昌は、天正9年（1581年）に織田信忠からの武田攻めの誘いを受けました。翌年1月には、弟を人質に出し、織田氏に寝返りました。これが信長の甲州征伐のきっかけとなりました。勝頼は、人質として送られていた義昌の母や妻子を処刑し、討伐軍を派遣しましたが、義昌は地の利と織田軍の援軍を得てこれを撃退しました。

武田家滅亡後

武田家滅亡後、義昌は信長に仕え、信濃で二郡を与えるとの内命を受け、深志城（後の松本城）に城代を置きました。しかし、本能寺の変が勃発すると、信濃国内も混乱し、義昌は美濃へ逃れる森長可を狙いましたが、逆に子の岩松丸（後の木曾義利）を人質に取られてしまいます。やむなく森長可の撤退を助けることになりました。

その後、武田家の遺領を巡り上杉景勝と徳川家康・北条氏直が争うと、義昌は当初北条氏に付きましたが、後に家康に寝返り、安曇・筑摩両郡と木曽谷の安堵を得ました。しかし、家康が小笠原氏の深志城復帰を認めると、家康と羽柴秀吉の対立を利用し、秀吉に恭順しました。小牧・長久手の戦いでは、徳川勢を妻籠城で迎え撃ちました。天正14年、秀吉と家康の講和により、木曽氏は家康の傘下に入り、その独立性を失いました。秀吉の北条攻めには病床のため出陣できませんでした。

晩年と死

天正18年（1590年）、家康の関東移封に伴い、下総国阿知戸に1万石を与えられ、木曽谷を離れました。木曽の山林資源に着目した秀吉によって木曽を没収されたとする説もあります。阿知戸に移った義昌は、城を築き、町作りを計画しました。また、東漸寺を開基しました。

没年は、文禄4年（1595年）2月13日、同年3月17日、慶長元年（1596年）7月13日の三説があり、家督は義利が継ぎました。法名は東禅寺殿玉山徹公大居士。遺体は椿海に水葬され、干潟となってから改めて墳墓が作られました。現在、その場所に木曾義昌公史跡公園があります。

子孫

義昌の死後、義利は乱暴な振る舞いにより改易に処されたとされています。義利の消息は不明な点が多く、伊予松山で没したとする説もありますが、確証はありません。その子孫は、親族の千村氏や山村氏などを頼り、尾張藩などに仕えました。義昌の他の子である義春は、大坂の陣で戦死し、義一は木曽谷で隠遁したとされています。

一族

大名家としての木曽家は消滅しましたが、一族の千村氏、山村氏、馬場氏らは、関ヶ原の戦いで徳川家康に付き、旗本や尾張藩の重臣となりました。甥の上松義次は上杉氏に仕えました。

関連作品

小説

伊東潤『木曾谷の証人』（『戦国鬼譚　惨』収録の短編）

ドラマ

真田丸 (NHK大河ドラマ) - 演：石井愃一

脚注

注釈

出典

参考文献

『西筑摩郡誌』
『木曽福島町史 第1巻 (歴史編)』
『旭市史 第1巻 (通史編・近代史料編)』
『旭市史 第3巻 (近世南部史料編,中世史料編)』
平山優『天正壬午の乱 本能寺の変と東国戦国史』（増補改訂版）

外部リンク

旭人物伝 | 旭市市勢要覧2018 - 旭市公式ホームページ

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