木曾義利

木曾義利とは

木曾義利（きそ よしとし）は、安土桃山時代から江戸時代初期にかけて活躍した武将であり、大名としての木曾氏の最後の当主です。天正5年（1577年）に生まれ、寛永17年（1640年）に没したとされています。武田信玄の外孫にあたり、名門の血筋を受け継ぎましたが、その生涯は波乱に満ちたものでした。

生涯

小田原征伐と家督相続

天正18年（1590年）、父である木曾義昌が病床にあったため、14歳で小田原征伐に従軍しましたが、合戦には遭遇しませんでした。同年、徳川家康の関東移封に伴い、木曾氏は先祖代々領有していた信州木曽谷から下総国海上郡阿知戸（現在の千葉県旭市）へ移封されました。木曽谷は太閤蔵入地となり、石川光吉が代官として支配しました。文禄4年（1595年）に父・義昌が亡くなると家督を相続しますが、父の遺体を城の西にある椿海に水葬するという異例の葬儀を行ったとされます。

粗暴な振る舞いと改易

義利は、短気で粗暴な性格であったと伝えられています。父・義昌が織田信長から拝領した「鈴蟲」という轡を、叔父の上松義豊が返さないことを理由に殺害したり、愛妾が小姓と密通したと疑い、事実確認をせずに二人を牛裂きの刑に処したりするなど、その行為は常軌を逸していました。これらの行状が徳川家康の耳に入り、慶長5年（1600年）に下総阿知戸1万石を没収され、改易となりました。

関ヶ原の戦いとその後

改易後、義利は小山評定で家康に謁見し、東軍に加わることを申し出ましたが、本多正信の進言により退けられました。正信は、義利の代わりに木曾氏の重臣であった山村良勝や千村良重らを用いるべきだと進言しました。その後、義利は母の真竜院のもとで木曽谷に隠棲したとも言われていますが、阿知戸退去後の消息ははっきりしていません。

諸説ある晩年

義利の晩年については、複数の説があります。東国から諸国を巡り、四国で亡くなったとする説や、京都で剃髪して蒲生氏に身を寄せたとする説もあります。また、松平定勝に仕え、寛永17年（1640年）に伊予国松山で亡くなったという説も存在しますが、確証はありません。一方、長崎県平戸市大島では、義利が流浪の末、井元弥七左衛門義利と名を変え、島の政務を執り行ったという伝承もあります。この地には義利の墓と、木曾家の先祖を祀る水向塔が残されています。子孫は伊予松山藩主松平家に仕えましたが、後に浪人し、木曾氏ゆかりの尾張藩士を頼ったとされています。

親族

義利の弟である義春は大坂の陣で豊臣秀頼方として戦死し、もう一人の弟である義一は母と共に木曽谷で隠遁したとされています。

まとめ

木曾義利は、木曾氏の最後の当主として、その短い生涯の中で様々な出来事を経験しました。その粗暴な性格と短慮な行動が、自らの運命を狂わせたと言えるでしょう。しかし、彼の足跡は、多くの伝説や伝承を生み、今もなお人々の関心を集めています。

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