上條信

上條信の生涯

上條信は、1884年（明治17年）10月3日、長野県東筑摩郡新村（現在の松本市）に生まれました。父は衆議院議員を務めた上條謹一郎です。松本中学校から早稲田大学に進学後、家業を継ぐために帰郷しました。1913年（大正2年）には新村村長に就任し、政治家としてのキャリアをスタートさせます。

鉄道事業への情熱

上條の功績として特筆すべきは、鉄道事業への貢献です。1915年（大正4年）には、有志とともに安筑軽便鉄道として松本 - 稲核間の鉄道敷設を申請しましたが、これは却下されました。その後、1918年に安曇鉄道が同様の計画を申請するも、これも実現には至りませんでした。しかし、上條は諦めず、1919年7月、筑摩鉄道として松本 - 龍島間19kmの免許を申請し、同年12月に認可を得ることに成功しました。

1921年（大正10年）10月2日には松本 - 新村間6.2kmが開業し、翌1922年9月26日には波多 - 島々間4.6kmが開業しました。さらに、1924年4月19日には松本-浅間間の浅間線が全区間開業し、上條の鉄道事業は大きく進展しました。これらの路線は、現在のアルピコ交通上高地線の基礎となっています。

多岐にわたる事業展開

鉄道事業以外にも、上條は多岐にわたる事業を手がけました。株式会社東筑電気を設立し、筑摩自動車を創設してバス路線を拡張するなど、地域交通の発展に貢献しました。また、銀行の役員としても活動するなど、幅広い分野でその手腕を発揮しました。これらの活動を通じて、地域の経済発展に大きく貢献しました。

政治家としての活動

上條は、実業家として活躍する一方で、政治家としても重要な役割を果たしました。新村村長、長野県議会議員、そして衆議院議員も務め、地域と国の発展のために尽力しました。特に衆議院議員としては、その経験と知識を活かし、さまざまな政策提言や法案審議に貢献しました。

親族

上條の親族には、政財界で活躍した人物が多数います。義甥には信州銀行や上伊那銀行の取締役を務めた武夫がおり、妹の夫には衆議院議員の飯島正一、姉の夫には同じく衆議院議員の丸山盛雄がいます。また、妻の猪於惠は、十七銀行取締役の吉川芳太郎の娘であり、親族関係を通じて幅広いネットワークを築いていました。

その死と遺産

上條信は、1950年（昭和25年）10月8日に67歳で亡くなりましたが、その功績は今日まで語り継がれています。彼が創設した筑摩鉄道は、現在アルピコ交通上高地線として、地域の人々の生活を支え続けています。上條の事業家としての先見の明と、政治家としての責任感は、後世に大きな影響を与えました。

年譜

1904年（明治37年） - 松本中学校卒業
1913年（大正2年） - 新村村長に就任
1919年（大正8年）12月 - 筑摩鉄道として松本駅 - 龍島駅間の鉄道免許取得
1921年（大正10年）10月2日 - 松本駅 - 新村駅間開業
1922年（大正11年）9月26日 - 波多駅 - 島々駅間開業
1924年（大正13年）4月19日 - 松本駅 - 浅間駅間の浅間線開業
1928年（昭和3年） - 衆議院議員に当選、筑摩電気鉄道社長を辞任
1950年（昭和25年）10月8日 - 逝去

参考文献

『歴史でめぐる鉄道全路線 公営鉄道・私鉄22　長野電鉄/上田電鉄/しなの鉄道/アルピコ交通』朝日新聞出版、2011年8月、28ページ

関連項目

アルピコ交通上高地線
アルピコ交通
松本電気鉄道浅間線
* 布引電気鉄道

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