飯島正一

飯島正一：地域経済を支えた銀行経営者

飯島正一（いいじま まさかず）は、1888年（明治21年）10月14日に長野県更級郡中津村（現在の長野市）で生まれ、1951年（昭和26年）2月10日に63歳で亡くなった銀行経営者です。大正から昭和にかけて、六十三銀行、そしてその後身である八十二銀行でその手腕を発揮し、頭取まで務めました。彼の生涯は、激動の時代における地方銀行の役割、そして地域経済の発展に尽力した人物の軌跡を伝えています。

生い立ちと六十三銀行での活躍

飯島正一は、地元の有力者である飯島正治の長男として生まれました。父・正治は衆議院議員を務める傍ら、六十三銀行の第2代頭取として銀行経営にも携わっていました。正一は1911年（明治44年）に早稲田大学商科を卒業後、1917年（大正6年）には故郷の村長に選ばれます。その後、1920年（大正9年）に父が頭取を務める六十三銀行に入行し、支配人に就任。翌年には常務取締役に昇進しました。また、同時期には信濃電気の取締役にも就任し、電力事業にも関わることになります。

六十三銀行以外にも、長野新聞や梓川電力、信越窒素肥料（現在の信越化学工業）といった企業の役員も務め、その経営手腕は多岐にわたりました。

八十二銀行の設立と経営

世界恐慌の影響が長野県の主要産業であった蚕糸業を直撃し、県下の経済界が動揺する中、六十三銀行は第十九銀行との合併を決断。1931年（昭和6年）に八十二銀行が設立されました。飯島は、新銀行でも常務取締役に就任し、その後副頭取へと昇進します。

1939年（昭和14年）には、頭取の死去に伴い、後任の頭取になることを周囲から推薦されましたが、時局を鑑みて、中央財界との繋がりが深い人物を頭取にすべきだと固辞しました。自ら後任探しに奔走し、片倉財閥の片倉兼太郎を頭取に、小坂順造を顧問に迎えました。これは、激動の時代における銀行経営の難しさと、飯島の責任感を示すエピソードと言えるでしょう。

太平洋戦争下の1944年（昭和19年）、飯島は八十二銀行の第4代頭取に就任しました。終戦後も片倉と共に銀行経営にあたりましたが、片倉の死後、1951年（昭和26年）に狭心症で急逝。彼の死後、八十二銀行の頭取には小出隆が就任しました。

多岐にわたる活動と家族

飯島正一は、銀行経営だけでなく、電力会社や新聞社など様々な企業の役員を歴任し、地域経済の発展に大きく貢献しました。彼の功績は、1943年（昭和18年）に緑綬褒章を受章したことからも伺えます。

妻は上條信の妹であるかうであり、親族には信越化学工業社長の小田切新太郎や、八十二銀行頭取の小出隆などがいます。

飯島正一の生涯は、激動の時代における地方銀行の役割、そして地域経済の発展に尽力した人物の軌跡を伝えています。彼のリーダーシップと先見の明は、現代においても学ぶべき点が多いと言えるでしょう。

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