上津屋橋

上津屋橋（流れ橋）

上津屋橋は、京都府久世郡久御山町と八幡市を結ぶ木津川に架けられた木橋です。増水時に橋桁が流される独特の構造から「流れ橋」や「木津川流れ橋」とも呼ばれています。全長約356.5m、幅3.3mのこの橋は、京都府道281号八幡城陽線の一部であり、歩行者専用橋として地域住民の生活を支えています。

概要

上津屋橋には手すりや欄干がなく、バイクや自転車は降りて通行する必要があります。夜間は街路灯がないため、周辺は暗くなります。最大の特徴は、木津川が増水した際に橋桁が流される構造です。橋板はワイヤーロープで繋がれており、水が引いた後に元の場所に戻せるようになっています。橋桁が流失した際は、約500m下流にある新木津川大橋などが迂回路として利用されます。

橋の周辺は堤防の外側であり、茶畑が広がっています。民家や電柱などがなく、その独特な景観から時代劇のロケーション撮影地として頻繁に利用されており、年間平均7回、多い時には24回も撮影が行われた記録があります。

歴史

江戸時代から明治時代中期にかけて、木津川の両岸は上津屋村という一つの農村でした。住民は渡し船で頻繁に川を往来し、石清水八幡宮への参拝客も利用していました。しかし、渡し船の不便さを解消するため、1953年（昭和28年）に少ない予算で架橋できる流れ橋として上津屋橋が誕生しました。当初は京都府道久津川停車場上津屋線の橋梁として建設されましたが、1959年（昭和34年）に現在の京都府道八幡城陽線となりました。

架設から2016年（平成28年）までに21回も流出しており、平均して3年に1回程度の頻度で流されています。特に2011年（平成23年）からは4年連続で流出する事態となりました。

流出の歴史

1953年（昭和28年）7月：初の橋桁流出
1959年（昭和34年）9月：伊勢湾台風による流出
1972年（昭和47年）7月：昭和47年7月豪雨による流出
1990年（平成2年）9月：台風19号による流出
2009年（平成21年）10月：台風18号による流出
2011年（平成23年）9月：台風12号による流出
2014年（平成26年）8月：台風11号による流出
2017年（平成29年）10月：台風21号による流出
2019年（令和元年）10月：令和元年東日本台風による流出
2023年（令和5年）8月：台風7号による流出

批判と検討

2010年代に入り、橋桁の流出が頻発するようになると、復旧までの期間通行止めになることや、多額の修繕費が発生することから、地元住民からは批判の声も上がりました。京都府知事は橋の構造見直しを検討する方針を示し、「上津屋橋（流れ橋）あり方検討委員会」が設立されました。

しかし、永久橋への架け替えには費用負担の問題や、橋が流れること自体が観光資源となっていること、近隣に新木津川大橋が開通したことなどから、従来の構造を維持する意見も多くありました。住民への意見公募では約8割が景観維持を希望し、署名活動では12,827名の署名とともに要望書が提出されました。これらの意見を踏まえ、2014年11月には従来の「流れ橋」構造のまま75cmかさ上げして復旧することが決定しました。

構造

通常の橋とは異なり、上津屋橋の橋桁・橋板は橋脚にワイヤーロープで繋がれているだけです。水位が上昇すると橋桁・橋板が浮かび上がり、ワイヤーによって流出を防ぐ仕組みです。この構造は、水の圧力に耐えるのではなく、一部が流されることで圧力を受け流すという「柔構造」の考え方に基づいています。また、上流から流れてきたものが橋脚に引っかかって決壊する事態を防ぐ効果もあります。

2015年（平成27年）には大規模な補強再建工事が行われ、北山杉が使用されました。橋桁と橋板は39枚で構成され、3枚ずつワイヤーロープで橋脚に固定されています。設計上の流出頻度は5年に1度を想定し、橋面は75cm嵩上げされました。

所在地・アクセス

所在地：京都府久世郡久御山町佐山浜台 - 京都府八幡市上津屋宮前川端
京阪本線石清水八幡宮駅・近鉄京都線新田辺駅から京阪バス上津屋流れ橋停留所、徒歩5分
JR学研都市線松井山手駅から京都京阪バス上津屋工業団地停留所、徒歩10分
京阪本線淀駅・近鉄京都線大久保駅から京都京阪バス佐山停留所、徒歩10分
JR学研都市線松井山手駅から京都京阪バス京都岡本記念病院停留所、徒歩10分

周辺施設

橋の八幡市側には、食事・休憩・入浴・宿泊ができる総合施設「やわた流れ橋交流プラザ 四季彩館」があります。また、近くには休憩所も整備されています。

上津屋橋を舞台にした作品

小説：流れ橋殺人事件（山村美紗）
* 音楽：木津の流れ橋（藤田まこと）

上津屋橋は、その独特な構造と美しい景観から、多くの人々に愛されています。訪れる際には、その歴史と構造に思いを馳せながら、ゆっくりと景色を楽しんでみてください。

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