上海クーデター

上海クーデター（四・一二事件）とは

1927年4月12日に中華民国（現：中国）の上海で発生した、中国国民党右派による中国共産党員と労働者の弾圧事件です。当時、国民革命軍は北伐を進めており、上海では共産党主導の労働者が武装蜂起していました。この蜂起に対し、国民党右派が武力鎮圧を行い、多くの共産党員や労働者が犠牲となりました。

中国国民党はこの事件を「清党」と呼び、共産党は「四・一二反革命政変」または「四・一二惨案」と呼んでいます。この事件は、第一次国共合作の崩壊の引き金となり、その後の中国の政治に大きな影響を与えました。

背景

1926年7月、国民革命軍は北伐を開始し、総司令には蔣介石が任命されました。北伐軍は順調に進軍し、蔣介石の権威は高まりました。しかし、国民党左派やソ連からの政治顧問ボロディンは、蔣介石の権力拡大を警戒しました。

一方、中国共産党は北伐に呼応して上海で武装蜂起を計画しました。最初の2回は失敗に終わりましたが、3回目の蜂起はゼネストと連携し成功を収めました。共産党の指導の下、上海の労働者は武装組織を作り上げ、上海に自治政府を樹立しました。

3月24日には、国民革命軍が南京を占領しましたが、その際、兵士や暴徒が外国の領事館や教会を襲撃する事件が発生しました（南京事件）。この事件を受け、欧米諸国や上海総商会は蔣介石に対し、共産党の排除と治安回復を求めました。蔣介石は外国の支援を得るために、租界における外国の支配を現状維持する事を保証しました。

事件の経過

1927年4月2日、蔣介石は反共清党準備工作を開始しました。

4月6日には、上海総工会工人糾察隊に共同での戦闘を呼びかけ油断させる一方、青幇や洪門といった秘密結社と連携し、右派団体を組織して上海総工会に対抗させました。

4月9日、蔣介石は上海に戒厳令を敷き、武漢国民政府の容共政策を批判しました。4月11日には、各省に清党を指示する密令を出しました。同日夜には、青幇の首領が共産党のリーダーを暗殺しました。

4月12日早朝、青幇などの武装集団が共産党や労働組合の拠点を襲撃し、虐殺を行いました。しかし、共産党員が籠城戦を展開したため、戦闘は膠着状態に陥りました。そこで、国民革命軍が仲裁の名目で介入し、双方から武器を回収しましたが、共産党員は国民革命軍を味方と信じて武器を差し出してしまいました。

4月13日、上海では大規模なストライキが発生し、労働者や学生による抗議デモが行われましたが、国民革命軍はデモ隊に発砲し、多数の死傷者が出ました。蔣介石は上海特別市臨時政府、上海総工会、および共産党の組織を解散させました。

その後、各地でも清党が開始され、共産党員やその支持者が逮捕・処刑されました。共産党はこれらの動きを「白色テロ」と批判しました。

結果と影響

4月18日、蔣介石は南京に国民政府を樹立し、武漢の汪兆銘（汪精衛）政府と対立しました（寧漢分裂）。

その後、武漢国民政府も共産党との関係を断ち、第一次国共合作は完全に崩壊しました。

上海クーデターは中国共産党に大きな打撃を与えましたが、共産党は武力闘争路線へと転換し、南昌蜂起や秋収蜂起などを起こしました。

一方、蔣介石は権力を掌握し、北伐を完成させて中国の統一を推し進めましたが、その過程でかつての協力者との政治闘争に巻き込まれることになりました。

上海クーデターは、その後の中国の歴史を大きく左右する出来事となりました。

もう一度検索