洪門

洪門（こうもん）とは

洪門（拼音: Hóng mén）は、明朝末期から清朝初期にかけて中国で生まれた秘密結社です。「反清復明（清を倒し、明を再興する）」をスローガンに掲げ、清朝打倒を目指しました。

洪門の名前の由来

洪門の名称には、以下のような由来があります。

明の初代皇帝「洪武帝」の年号にちなむ説
明の皇帝の姓である「朱」が赤色を意味し、「洪」と同音であること
「漢」の字から「中」と「土」を取り除くと「洪」になるという説（漢民族が中原を失った意味）

洪門の歴史

清朝後期には、洪門の組織は中国全土に広がり、東南アジア、ヨーロッパ、アメリカ大陸にも進出しました。会員数は百万単位に達したと言われています。太平天国や辛亥革命では重要な役割を果たし、孫文も洪門に加入していました。

中国共産党の創始者の一人である李大釗は、天地会を「マルクス自身が創建し指導する第一インターナショナルと組織的な繋がりを持つ中国唯一の革命団体である」と評しています。

洪門の組織

洪門組織は、縦横に連携した独自のシステムを持っています。龍頭、座堂、執堂といった職位による縦の系統に加え、「言談」や「手勢」といった共通の認識コードによる横の繋がりがあります。これにより、初対面同士でも、手勢や隠語を通じて兄弟として認め合い、助け合うことができるのです。

入会には紹介が必要ですが、身分や貧富による制限はありません。会員はお互いを手足のように大切にし、結束を固めます。この結束力の強さが、洪門が世界中に広がった要因の一つと言えるでしょう。

会簿

会簿は、組織の秘密が記された重要な記録です。組織の幹部のみが所持を許され、組織図、入会儀式、誓いの言葉、掟、隠語、手話などが記載されています。会簿は「海底」または「金不換」と呼ばれ、非常に貴重なものとされていました。

伝説によれば、1683年に鄭成功の孫が洪門、天地会に関する文書を鉄箱に密封して海底に沈め、1848年に郭永泰という人物が漁師から入手したとされています。三合会の会簿も、この海底から引き上げられた文書を元に作成されたと言われています。

清朝における洪門

乾隆帝の時代には、洪門は衰退し、反清の気運も薄れていました。しかし、その後も各地で様々な秘密結社が生まれました。

白蓮教: 宗教的な色彩が強く、武装蜂起を起こしました。
天地会: 相互扶助を目的とした組織でしたが、後に反清運動に加わりました。
拝上帝会: 洪秀全が設立し、太平天国の前身となりました。
三合会: 天地会が広東に伝わる際に名称を変えたもので、太平天国や辛亥革命に協力しました。
哥老会: 中国共産党の指導者である朱德が若い頃に加入し、その助けを得ました。
義和団: 「扶清滅洋」をスローガンに掲げ、義和団の乱を引き起こしました。
華記: マレーシアの華人社会における秘密結社です。

現代の洪門

1992年には、世界各地の洪門関係者が集まり、世界洪門総会が設立されました。総会はホノルルに設置されています。

洪門に関する参考文献

* 安部英樹、『洪門人による洪門正史―歴史・精神・儀式と組織』、雅舎、2007年。

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