上矢部 (相模原市)

神奈川県相模原市中央区上矢部：歴史と米軍施設が織りなす街並み

上矢部は、神奈川県相模原市中央区に位置する地域です。境川を挟んで東京都町田市と隣接しており、その歴史は古く、平安時代末期から鎌倉時代にかけては、この地を拠点とした矢部氏が存在していました。上矢部五丁目には、矢部氏の居館跡とされる矢部城の跡が残されています。

境川と境界問題

上矢部の地理的特徴として、境川が重要な役割を果たしています。かつては境川の蛇行する流路が、相模原市と町田市の境界線となっていました。しかし、1970年代以降の河川改修により、境川の流路が大幅に変更された結果、現在では両市に「川向こうの飛び地」が多く存在する状況となっています。この問題を解消するため、両市は現在も境界変更協議を進めており、数年に一度、境界線の調整が行われています。

段丘崖と相模原台地

境川の南岸には段丘崖が伸びており、その南側は相模原台地が広がっています。古くからの集落は主に段丘崖付近に形成され、境川沿いの低地には水田が広がっていました。台地上は、ヤト（谷戸）と呼ばれる地形は発達しておらず、比較的平坦な地形です。台地の大部分は、隣接する地域にまたがって在日米陸軍相模総合補給廠が占めています。

米軍施設と都市開発

上矢部の歴史において、重要な出来事の一つに、1938年（昭和13年）の陸軍相模兵器製造所の開設があります。この兵器製造所の建設により、上矢部と周辺地域の大部分が軍用地となりました。その後、隣接地に陸軍兵器学校も移転し、相模原は一大軍事都市として発展していきます。終戦後は、米軍に接収され、現在も在日米陸軍相模総合補給廠として利用されています。米軍施設の存在は、上矢部の土地利用や都市開発に大きな影響を与え続けています。

市街化と住居表示

1990年代まで、上矢部は農地が多くを占めていましたが、その後急速な市街化が進みました。特に相模総合補給廠北側の台地上では、農地が宅地へと転換されています。1966年には、旧陸軍兵器学校の跡地の一部で住居表示が実施され、1978年には境川沿いの旧集落周辺でも住居表示が実施されました。現在では、在日米陸軍相模総合補給廠の敷地内の一部を除き、住居表示が完了しています。

地価と交通

2023年1月1日時点の公示地価によれば、上矢部の住宅地の地価は12万2000円/m2となっています。交通面では、JR横浜線の矢部駅や淵野辺駅からやや離れた場所に位置するため、市街化の波及はやや遅れていましたが、近年は交通網の整備も進み、利便性も向上しています。

歴史的変遷

上矢部の歴史は、境川を挟んで武蔵国と相模国という異なる地域にまたがる複雑な経緯をたどっています。江戸時代には幕府直轄領や藩領を経て、明治時代には町村制の施行により、大野村の大字上矢部となりました。その後、相模原町の成立、そして相模原市の発足を経て、現在に至っています。

まとめ

上矢部は、歴史と米軍施設、そして自然環境が複雑に絡み合った地域です。境川を挟んだ東京都町田市との境界問題、米軍施設の存在、そして近年の都市開発など、上矢部の歴史と現状を理解するには、これらの要素を総合的に捉える必要があります。今後も、この地域の歴史と将来の発展を見守っていくことが重要です。

参考資料

* 『相模原市史 現代図録編』 相模原市総務部総務課市史編さん室、2004年

もう一度検索