上赤坂城の戦い

上赤坂城の戦い：鎌倉幕府を揺るがした激戦

上赤坂城の戦いは、元弘3年（1333年）に河内国（現在の大阪府南河内郡千早赤阪村付近）で繰り広げられた、鎌倉幕府と後醍醐天皇勢力との間の戦いです。この戦いは、元弘の乱における主要な戦いである千早城の戦いの前哨戦としての意味合いを持ちます。

戦いの背景

元弘元年（1331年）、後醍醐天皇は鎌倉幕府の倒幕を企て、笠置山で挙兵しましたが、幕府軍に敗れて捕らえられました。しかし、楠木正成・正季兄弟は、下赤坂城を拠点に幕府軍に抵抗を続けました。下赤坂城は幕府軍の総攻撃により落城しましたが、楠木兄弟はその後もゲリラ戦を展開し、幕府を悩ませ続けました。

幕府は楠木兄弟に対抗するため、大軍を派遣することを決定。これに対し楠木正成は、より堅固な上赤坂城を築城し、平野将監入道を主将、弟の正季を副将として守備に当たらせました。正成自身は、天険の要害である千早城に籠り、幕府軍を迎え撃つ態勢を整えました。

戦いの経過

元弘3年2月22日、幕府軍は上赤坂城への攻撃を開始しました。幕府軍は、河内からの大手総大将である阿蘇治時が指揮を執り、千早・吉野方面への攻撃部隊よりも手厚い兵力が配備されました。これは、幕府が平野将監入道を楠木正成と同格の河内における有力者と見なしていたためです。

上赤坂城は、その地形的な利点と堅固な防御設備により、幕府軍の攻撃を度々退けました。しかし、幕府軍は兵糧攻めや水の手を断つ作戦を実行し、城内の兵士たちは次第に疲弊していきました。戦いは約10日間に及び、閏2月1日、ついに上赤坂城は落城しました。

戦いの終結とその後

上赤坂城の落城後、主将であった平野将監入道は幕府に投降しましたが、その後の消息は不明です。弟の正季は、城からの脱出に成功し、幕府の追手を逃れました。

一方、幕府軍も大きな損害を受けました。『楠木合戦注文』によれば、幕府軍の死傷者は1,800人以上に達し、うち死者は203人以上でした。この戦いでの幕府軍の損害は、御家人の間に厭戦感情を引き起こし、倒幕運動へと繋がる一因となりました。

上赤坂城の戦いの意義

上赤坂城の戦いは、元弘の乱における重要な戦いの一つであり、鎌倉幕府の衰退を加速させる要因となりました。この戦いにおいて、楠木軍は最新の武器や戦術を駆使し、幕府軍に大きな損害を与えました。また、この戦いは、御家人の間に厭戦感情を広げ、倒幕運動へと繋がるきっかけとなりました。

上赤坂城の戦いは、単なる局地的な戦闘ではなく、鎌倉幕府の滅亡と新たな時代の到来を告げる、歴史的な転換点となったのです。

史実と太平記の相違点

軍記物『太平記』には、上赤坂城の戦いに関する記述がありますが、史実とは異なる点も多く存在します。

日付: 史実では2月22日に始まり閏2月1日に終わる約10日間の戦いですが、『太平記』では2月2日に開戦し、終期は不明です。
楠木正季の存在: 史実では楠木正成の弟である正季も守将として参戦していますが、『太平記』には登場しません。
人見恩阿・本間資貞のエピソード: 『太平記』に描かれる人見四郎入道恩阿と本間九郎資忠の「抜け駆け」のエピソードは創作であり、史実とは異なります。
用水路を断つ: 幕府軍が用水設備を破壊して勝利したという記述は、『太平記』にのみ見られ、一次史料には記載されていません。

これらの相違点から、『太平記』は史実を基にしながらも、物語としての面白さを追求するために、脚色や創作が加えられていることがわかります。

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