上野原遺跡

上野原遺跡について

上野原遺跡は、鹿児島県霧島市にある「鹿児島県上野原縄文の森」内に位置する複合遺跡です。縄文時代早期から中世にかけての長い期間にわたる遺構が確認されており、特に縄文時代早期の集落跡は、日本列島における縄文文化の黎明期を解明する上で非常に重要な手がかりとなっています。この遺跡は、工業団地造成中に偶然発見され、その後の発掘調査によって、その歴史的価値が明らかになりました。

発掘調査の詳細

発掘調査は、17層にも及ぶ土層に対して行われ、各層から異なる時代の遺物や遺構が発見されました。

1層目：現代の農耕土で、土師器や陶磁器が発見されました。
2層目：中世から近世の遺跡とされ、竪穴建物跡や山之口式土器、中溝式土器が見つかりました。
3層目：古墳時代から弥生時代の遺跡で、掘立柱建物跡や石器が出土しました。
4層目：縄文時代晩期の遺跡で、黒川式土器や多数の土坑が確認されました。
5層目、6層目：桜島の火山灰を含む土層です。
7層目：縄文時代早期中葉から前葉の遺跡で、様々な縄文土器や集石遺構が発見されました。
8層目：前平式土器や撚糸文土器が確認されました。
9層目：竪穴建物跡や集石遺構、連穴土坑、前平式土器などが発見されました。この層と10層目の間には、縄文時代早期前葉の遺構が挟まれる形で存在し、特に重要な集落跡が確認されました。
* 10層目：桜島の火山灰（サツマ火山灰）を含む層で、これより下の層では遺跡は確認されていません。

特に注目すべきは、9層目と10層目の間にある縄文時代早期前葉の遺構です。ここでは、竪穴建物52棟をはじめ、石蒸し料理のための集石遺構39基、連穴土坑19基、道跡、多数の土坑や生活跡が発見されました。この集落跡は、「国内では最古級で最大の定住化した集落」とされています。

連穴土坑について

連穴土坑は、大小の穴の底面がトンネル状に繋がった遺構で、調理場跡と考えられています。南九州では縄文草創期から確認されており、上野原遺跡以外にも、掃除山遺跡や栫ノ原遺跡などでも発見されています。連穴土坑内からは、狩猟獣であるシカやイノシシに由来する残留脂肪酸が検出されており、食料の保存加工のための燻製施設であったとする説も有力です。

遺跡の年代と再測定

発掘当初、この集落跡の年代は約9500年前とされていましたが、近年の加速器質量分析装置による年代測定の精度向上により、約1万700年から1万400年前のものと判明しました。また、双子壺などの遺物群も、以前は7500年前のものとされていましたが、再測定により8800年から8550年前のものと修正されました。

発掘後の状況と現状

現在、遺跡は保護のために埋め戻され、その上に縄文時代の竪穴建物などが復元されています。遺跡は「鹿児島県上野原縄文の森」として整備され、一般公開されています。園内にある「縄文の森展示館」では、遺跡から出土した遺物を見学することができます。また、敷地内には鹿児島県立埋蔵文化財センターも併設されており、鹿児島県内の考古学研究の拠点となっています。

まとめ

上野原遺跡は、縄文時代早期の集落跡として、日本の考古学において非常に重要な遺跡です。この遺跡の発掘調査によって、縄文文化は東日本だけでなく、西日本でも早くから発達していたことが明らかになりました。遺跡の発見と研究は、日本の歴史と文化を理解する上で、非常に大きな貢献をしています。

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