上野国分寺跡

上野国分寺跡：古代の息吹を伝える史跡

上野国分寺跡は、群馬県前橋市と高崎市に位置する、奈良時代に建立された古代寺院の遺跡です。この地には、僧寺と尼寺の両方が存在し、それぞれが国の史跡として指定されています。ここでは、その歴史的背景や伽藍配置について詳しく見ていきましょう。

立地と概要

上野国分寺跡は、榛名山の南東麓、染谷川と牛池川に挟まれた台地上に位置しています。現在、関越自動車道によって分断されていますが、かつては僧寺と尼寺が南辺を揃えて隣接していました。この地域は、律令制以前から古代寺院が建立された場所であり、律令制下では国分寺の他に、上野国府も置かれていたと推定されています。

歴史

古代

国分寺の創建時期は明確ではありませんが、天平13年（741年）の国分寺建立の詔の頃に創建されたと考えられています。『続日本紀』には、天平勝宝元年（749年）に当寺への知識物献上の記録があり、聖武天皇の詔を受けて速やかに造営が始まったとする説が有力です。

延長5年（927年）に成立した『延喜式』には、上野国の国分寺料として稲5万束が当てられていたと記されています。しかし、長元3年（1030年）の『上野国交替実録帳』には、諸建物が破損・荒廃していた様子が記述されており、創建から時が経ち、寺の維持が困難になっていたことが伺えます。

廃絶時期は不明ですが、14世紀には講堂の一部が墓地化していたことから、伽藍が失われたと考えられています。廃絶の要因としては、平将門による上野国府乱入や、足利俊綱による上野国府焼き払いとの関連を指摘する説もあります。

近代以降

僧寺跡は1926年（大正15年）に国の史跡に指定されました。1980年代から発掘調査と史跡整備が行われ、塔や金堂（後に講堂と判明）の基壇などが復元されました。尼寺跡も2016年から発掘調査が実施され、2024年10月11日に国の史跡に指定されています。

伽藍配置

僧寺跡

僧寺跡の寺域は、東西220メートル、南北235メートルと推定されています。主要伽藍は、南から南大門、中門、金堂、講堂が一直線上に配置され、金堂の西側には七重塔と推定される塔が配置される、東大寺式伽藍配置（国分寺式伽藍配置）です。金堂の左右からは回廊が出て中門左右に取り付いています。僧房（僧坊）の有無は不明です。金堂と塔が東西に並立している点が大きな特徴です。

尼寺跡

尼寺跡は、僧寺跡の東方約300メートルの場所に位置しています。寺域は一辺約1.5町と推定され、中門、金堂、講堂、尼房（尼坊）の基壇が確認されています。東大寺または法華寺を模倣した、塔を省略した伽藍配置と推定されており、築垣は簡略的なものだったとされています。

文化財

上野国分寺跡と上野国分尼寺跡は、それぞれ国の史跡に指定されています。

上野国分寺跡：1926年（大正15年）10月20日指定
上野国分尼寺跡：2024年（令和6年）10月11日指定

現地情報

所在地

国分僧寺跡：群馬県前橋市元総社町、高崎市東国分町・引間町
国分尼寺跡：群馬県前橋市元総社町、高崎市東国分町

関連施設

上野国分寺館（ガイダンス施設）：上野国分寺跡に隣接
上野国分寺：後継寺院

まとめ

上野国分寺跡は、古代日本の歴史を今に伝える貴重な史跡です。僧寺と尼寺の跡が残るこの場所は、当時の人々の信仰や生活を知る上で重要な手がかりとなります。発掘調査によって徐々に明らかになる伽藍配置や歴史的背景は、私たちに古代の息吹を感じさせてくれます。

参考資料

上野国分寺館説明資料
地方自治体発行 発掘調査報告書
現地説明会資料
事典類
その他

外部リンク

上野国分寺跡 - 国指定文化財等データベース（文化庁）
* 史跡上野国分寺跡へのご案内、史跡上野国分寺跡の発掘調査について - 群馬県ホームページ

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