上野検車区渋谷分室

東京メトロ銀座線 渋谷車庫

東京地下鉄（東京メトロ）が管轄する銀座線の車両基地の一つに、かつて「上野検車区渋谷分室」と呼ばれた施設があります。現在の公式な名称は「渋谷駅構内側線」あるいは「渋谷車庫」とされており、渋谷マークシティの3階部分に位置し、銀座線渋谷駅の引上げ線に接続しています。

この車両基地は、元々は帝都高速度交通営団（営団地下鉄）の「渋谷検車区」でしたが、2000年3月に組織が上野検車区に統合され、「上野検車区渋谷分室」となりました。その後、2001年6月には渋谷分室という組織自体は廃止されましたが、車両基地としての機能と設備は現在も存続し、活用されています。2004年4月の営団地下鉄の民営化に伴い、東京地下鉄の所属となっています。

歴史的変遷

渋谷車庫の始まりは古く、1938年12月に東京高速鉄道が「渋谷電車庫」として開設したことに遡ります。工場業務と検車業務を兼ね備えた施設でした。1941年9月には帝都高速度交通営団が発足し、この電車庫も営団に引き継がれました。

戦後、銀座線の輸送力が強化されるにつれて、手狭になった車両基地の収容能力が課題となりました。車両を分割して留置せざるを得ない状況も発生したため、1953年7月と1958年11月には拡張工事が実施され、相次ぐ輸送力増強のニーズに応えるための対応が続けられました。

しかし、渋谷という都市部の地理的な制約から大規模な改良が困難であったため、業務内容は変化していきます。1964年3月には工場業務が廃止され、その機能は丸ノ内線の中野工場へ移管されました。さらに、1968年4月に上野検車区の拡張工事（地下留置線の完成）が完了すると、主要な検車業務は上野に集約され、渋谷検車区は上野検車区の補完的な役割を担うことになりました。

渋谷地区再開発事業との連携

1970年代後半、銀座線渋谷駅へ続く高架橋の老朽化が著しく、早期の対策が求められていました。また、近隣の東急バス専用道や京王井の頭線渋谷駅でも混雑緩和が課題となっていました。これらの背景から、1979年7月には営団地下鉄、東京急行電鉄（現：東急）、京王帝都電鉄（現：京王電鉄）の3社が連携し、渋谷地区の土地の一体的な活用と高度な立体利用計画の検討が開始されました。

最終的な計画では、京王井の頭線側と渋谷検車区側の両方に大規模な複合施設を建設することになり、特に渋谷検車区側には地上23階、地下1階建ての商業施設やオフィスビルが計画されました。これは開発面積が14万4,000m2に及ぶ一大プロジェクトとなりました。1989年12月には、この共同プロジェクトに関する協定が正式に締結されました。

この再開発事業と並行して、1994年4月からは渋谷検車区自体の鉄道施設改良工事が着工されました。高架橋設備の改築に加え、従来の3両対応だった検査ピットを6両編成に対応できるよう拡張するなど、施設の近代化が図られました。また、上層階の建物への騒音・振動の影響を考慮し、車庫構内にはバラスト道床防振軌道が採用されています。

改良工事の期間中、留置線は2本に制限され、6両編成が4本しか収容できないという厳しい状況が続きました。このため、夜間の収容数不足を補うために、数本の編成を夜間に丸ノ内線の中野検車区へ回送し、翌朝再び銀座線へ戻すという対策がとられました。この措置は工事の進捗により、1999年3月に8編成の留置が可能になったことで解消されました。渋谷車両基地における一連の改良工事は2000年2月に全て完了し、再開発ビルは「渋谷マークシティ」として同年4月7日に開業しました。

現在の設備と運用

再開発前の渋谷車庫の敷地面積は7,636m2でした。現在の収容能力は、6両編成で9本、合計54両となっています。収容線は、主に車両を留置するための留置線が6線（2番線から4番線、6番線から8番線）、そして検査を行うための検査線が1線（5番線）で構成されています。検査線には床下点検用のピットや屋根上点検作業台が備えられていますが、現在、車両に対する列車検査は渋谷では行われていません。このほか、車庫内には自動洗浄機が設置されているほか、保線車両を留置するための機材線が1線（1番線）設けられています。

かつて、2019年12月27日まで、銀座線の渋谷駅に到着した全ての列車は折り返しのため、この車庫に一旦回送されていました。しかし、その後の工事運休を経て、2020年1月3日に渋谷駅が新駅舎に移設されたことで、ホーム上で折り返しが可能になりました。現在でも、車庫への入庫列車や車庫からの出庫列車は、渋谷駅2番線から続く車庫への線路を経由して回送されています。

地下鉄道玄坂ビル

渋谷車両基地の高架下には、東京高速鉄道の開業以来、乗務員や検車・技術担当の事務所が置かれていました。渋谷地区再開発計画に伴い、これらの事務所機能は新たなビルに移転することになり、1987年1月に営団地下鉄が所有する敷地に「地下鉄道玄坂ビル」が建設されました。このビルは地下1階、地上5階建てです。

現在、このビルには銀座線の運転士・車掌が所属する事務室のほか、銀座線および半蔵門線・南北線の工務、電機、信号通信に関する部署の事務所が入居しており、渋谷地区における東京メトロの運行・保守拠点としての役割を担っています。

渋谷車庫は、組織としては過去のものとなりましたが、銀座線の運行を支える車両基地設備として、渋谷の街並みと一体化した形で現在も重要な機能を果たし重要な機能を果たしごとく機能し続けています。

もう一度検索