東京高速鉄道

東京高速鉄道（とうきょうこうそくてつどう）

東京高速鉄道株式会社は、現在の東京地下鉄（東京メトロ）銀座線の新橋駅 - 渋谷駅間を建設・運営した東急系の鉄道事業者です。日本初の地下鉄路線区間を含む銀座線浅草駅 - 新橋駅間を開業した東京地下鉄道とともに、現在の東京地下鉄（東京メトロ）のルーツの一つとなっています。

概要

東京市は、市内交通の公営主義に基づき地下鉄を市営として建設する計画を持っていました。1925年に内務省告示第56号で位置づけられた地下鉄5路線のうち4路線の免許を得ていましたが、予算の問題から実現が遅れていました。しかし、東京地下鉄道が好成績を収めているのを見て、一部の企業家は十分な採算性があると考え、東京市の持つ地下鉄建設免許の譲渡を請願しました。東京市がこれを認めたため、1934年9月5日、建設運営を行う会社として東京高速鉄道が設立されました。

当初は前年までに会社を設立することが免許譲渡の条件とされていましたが、資金が集まらなかったため延期され、東京横浜電鉄（東急電鉄の前身）系列の五島慶太を発起人に加える形でようやく設立にこぎつけました。そのため、五島が経営の主導権を握ることになりました。

譲渡された免許区間は内務省告示第56号のうち、3号線の渋谷 - 東京（丸ノ内）間と4号線の新宿 - 築地間でした。東京高速鉄道は東京横浜電鉄のターミナルがある渋谷からの建設を開始し、1938年11月18日、青山六丁目駅（現: 表参道駅） - 虎ノ門駅間を開通させました（単線並列）。この時、資金難からホームの有効長を3両分にするなど、建設コストを徹底的に削減して建設しました。

1938年12月20日には、渋谷線の渋谷駅 - 青山六丁目駅間が開業しました。この区間は、地形の関係で急勾配が発生するため、高架で建設され、東横百貨店（現: 東急百貨店）の3階に乗り入れる形で東京高速鉄道の渋谷駅が設けられました。

東京高速鉄道渋谷線は虎ノ門駅から先は、東京地下鉄道線（この時点で新橋駅 - 浅草駅間が開業済み）と直通運転することを目論んでいました。しかし、早川徳次率いる東京地下鉄道は京浜地下鉄道を設立し、新橋駅から品川駅まで延伸して京浜電気鉄道（現: 京浜急行電鉄）との直通運転を行うことを計画していました。そのため、両者を同時に乗り入れさせるのはダイヤ的に困難だとして、東京地下鉄道はこれを拒否しようとしました。その後、監督官庁の鉄道省が調停に入り、1935年5月に両社が直通運転を行うという内容の協定が結ばれました。

しかし、その後も東京地下鉄道側から東京高速鉄道への牽制的行動がなされたため、五島は早川との協調姿勢を対決姿勢へと転化させました。京浜電気鉄道と東京地下鉄道の株式を押さえて京浜電気鉄道を支配下に置き、さらに東京地下鉄道を東京高速鉄道に合併させようとしました。しかし、五島が押さえることのできた東京地下鉄道株式は35%に留まったため、経営権の争奪競争に発展しました。最終的には、内務省が仲裁に乗り出し、五島・早川の両者が地下鉄事業から手を引くことを条件に調停を行いました。

1939年1月15日、東京高速鉄道は虎ノ門駅から新橋駅への延伸を果たしました。しかし、東京地下鉄道側は直通の準備ができていないことを理由に自社駅への乗り入れを拒否したため、東京高速鉄道は独自に建設していた折り返しホームを利用していました。1939年9月16日に東京地下鉄道の駅への乗り入れが実現し、この状態は解消されました。

1941年7月4日、戦時中の交通事業再編・統制を行うための陸上交通事業調整法に基づき、東京地下鉄道と東京高速鉄道は、帝都高速度交通営団として統合されました。

営団発足後の1942年6月には、東京高速鉄道が新宿線として計画していた区間のうち四谷見附 - 赤坂見附間の工事が開始されましたが、太平洋戦争の戦局悪化に伴い、1944年6月に建設が中止されました。戦後、この区間は1959年3月に丸ノ内線として開業しました。

東京高速鉄道が建設した新橋駅のホームは現存しており、車両留置や資材置き場などに活用されています。通常は一般の立ち入りは許可されていませんが、特別イベントで公開されることがあります。

以後への影響

東京市が東京高速鉄道へ免許を譲渡したことで、当時の鉄道省からの信用を失ってしまい、戦後東京都が営団地下鉄の都営化を主張した時も、東京都だけで地下鉄の建設運営を行うことは不可能と判断されました。以後、東京における地下鉄整備は、営団地下鉄と都営地下鉄が分担して行うことが方針として定められました。2004年4月1日に営団地下鉄が再編によって東京地下鉄（東京メトロ）となった現在でも、原則としてそれは引き継がれています。東京の地下鉄運営団体が2つ存在するのは、このような経緯によるものです。

車両

100形 - 後に営団地下鉄に継承され、一部は丸ノ内線へ転じて1968年引退。うち1両は車両をカットし、登場時の姿に復元の上地下鉄博物館で保存されています。

関連企業

東京環状乗合自動車

関連項目

東京地下鉄道
帝都高速度交通営団（営団地下鉄）
営団
東京地下鉄（東京メトロ）
都営地下鉄
五島慶太
早川徳次

外部リンク

東京メトロ

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