上野清信

上野清信：足利幕府から豊臣政権へ至る波乱の生涯

上野清信は、戦国時代から安土桃山時代にかけて活躍した武将です。その出自は河内源氏を祖とする足利氏の傍流、上野氏に連なります。しかしながら、彼の出自や初期の経歴については不明瞭な点が多く、史料に頼りつつも断定的な記述は難しい部分があります。

『綿考輯録』には、清信が山城国を拠点とする在地勢力出身であったとする伝承が記されていますが、同書はこれを「不分明」としています。足利義輝の時代に奉公衆として将軍家に仕え始めたことは確かなようです。

永禄八年（1565年）、永禄の変で足利義輝が暗殺されると、清信は義輝の実弟・足利義昭に付き従い、越前国の朝倉義景を頼って逃れました。一乗谷城に滞在した清信は、朝倉義景に義昭を支援するよう働きかけましたが、義景は動かず、義昭は織田信長の保護を受けることになります。

織田信長の支援を得て将軍職を回復した義昭と共に京へ戻った清信でしたが、その後、義昭と信長の対立が深まっていきました。信長包囲網が崩壊し、織田軍が幕府を圧迫する状況下で、清信は義昭に徹底抗戦を主張し、降伏を勧める細川藤孝と激しく対立したと伝えられています。ただし、義昭時代における清信の活躍については、その後の家督を継いだ上野秀政と混同されている可能性も指摘されており、秀政が反信長勢力の中心として活躍したとする説もあります。

天正四年（1576年）、義昭が毛利輝元に身を寄せた際、清信は前年に備中の上野氏が毛利氏によって滅ぼされていたことを受け、義昭から離れて織田信長に仕える道を選びました。本能寺の変後は、豊臣秀吉に仕え、馬廻衆としてその側近にありました。文禄・慶長の役では秀吉に従軍し、名護屋城に滞在した記録が残されています。

しかし、彼の晩年については記録が乏しく、その後の消息は不明です。上野清信は、動乱の時代を生き抜き、複数の勢力に仕えた稀有な武将と言えるでしょう。彼の人生は、史料の不足から未だ多くの謎に包まれており、今後の研究によってさらに明らかになることが期待されます。様々な勢力の思惑が渦巻く中で、清信はどのような判断を行い、どのような生き方を選んだのか。彼の生涯は、戦国時代の複雑な政治状況を理解する上で重要な手がかりを与えてくれます。 謎多き人物像に迫ることで、戦国時代のより深い理解へと繋がることが期待されます。

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