綿考輯録

『綿考輯録（めんこうしゅうろく）』は、肥後熊本藩主であった細川家の歴史を詳細に記録した家史であり、全63巻という大部な構成を持っています。大日本史料においては『細川家記』としても知られています。書名の『綿考輯録』は、「連綿と続く思索を編集する」という意味合いが込められています。

成立の背景

この家史は、細川藤孝、忠興、忠利、光尚の4代にわたる歴史を網羅しています。江戸時代中期の安永7年（1778年）に、熊本藩の藩士であった小野景湛によって編纂が開始されました。小野景湛は、それ以前に存在していた細川家に関する複数の伝記（『細川之御伝記』、『細川家伝』、『細川全記』、『御伝記』、『御家譜』、『細川御系譜』など）を参考に、また他家の家記や軍記物などをもとに草稿をまとめました。

小野景湛の死後、編纂事業は藩の記録局に引き継がれ、彼の遺稿は詳細な浄書と校訂を経て完成に至りました。

所蔵と公開

大正時代の写本は現在、国会図書館に収蔵されています。また、稿本は永青文庫に所蔵されており、熊本県立美術館の「細川コレクション永青文庫展示室」で展示されることもあります。さらに、現在では出水叢書として活字本が出版されており、広く一般に入手可能です。

史料としての価値と課題

『綿考輯録』は、熊本藩の肥後細川家における公式な歴史書として、数多くの古記録を収録している点で、一級の史料としての価値を持っています。しかし、複数の歴史書を集成して編纂されたという性質上、『明智軍記』からの転載と見られる箇所も存在し、特に藤孝・忠興の2代に関する記述については、内容の史実性や信憑性に疑問が呈される部分も存在します。

書籍情報

小野景湛 編『国立国会図書館デジタルコレクション 緜考輯録』。
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2608684/1 国立国会図書館デジタルコレクション。
出水神社 編『綿考輯録』 全7、汲古書院〈出水叢書〉、1988-1992年。

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