下学集

『下学集』の概要

『下学集』は、室町時代の1456年に成立した国語辞典です。この辞典は、東麓破衲（とうろくはのう）によって編纂され、その名称は『論語』の中の「下学而上達」から取られています。辞典の内容は、語義を基に18の異なる門に整理されており、合計で約3000語以上の単語が収められています。

成立背景と歴史

『下学集』の成立年は文安元年（1444年）とされ、その後しばらくの間は抄本の形で流通していました。江戸時代初期の元和3年（1617年）に初めて印刷され、一部の改訂版も登場しました。この辞典は、他の室町時代の辞書とは異なり、その豊富な語彙と使いやすさから、広く用いられていたことが特徴です。

しかし、江戸時代に入ると、『節用集』の登場により利用頻度が減少しました。実際、『節用集』は『下学集』の形式や内容から影響を受けているため、辞典としての地位は徐々に失われていったと言えます。元和から17世紀頃にかけては、元和本の再版や改変された版も見られましたが、それでも『下学集』は次第に用いられなくなったのです。

辞典の構成

『下学集』の特筆すべき点は、その内容が18の門に分かれていることです。具体的には、「天地」「時節」「神祇」「人倫」「官位」「人名」「家屋」「気形」「支体」「態芸」「絹布」「飲食」「器財」「草木」「彩色」「数量」「言辞」「畳字」の各カテゴリーが設けられています。この分類方法は、鎌倉時代に編纂された韻書『聚分韻略』の影響を受けていると考えられています。

元和三年版では、3083の単語が漢字で表記され、その隣に片仮名での読みが付されています。すべての単語に文書の説明が付くわけではありませんが、多くの単語には漢文からの説明が見られ、語数はカテゴリーごとに不均衡です。たとえば、「器財」カテゴリーには470語が含まれていますが、「神祇」ではわずか35語にとどまります。

参考文献

『下学集』の詳しい研究については、上田万年や橋本進吉の著作、また山田忠雄による解説本が参考になります。これらの文献は、辞典の成立背景や構成内容についての理解を深めるために重要な資料です。『下学集』は、その歴史的な意義と辞典としての独自性から、日本の言語文化において重要な位置を占める資料と言えるでしょう。

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