下寺尾官衙遺跡群

下寺尾官衙遺跡群

概要

下寺尾官衙遺跡群（しもてらおかんがいせきぐん）は、神奈川県茅ヶ崎市下寺尾に広がる古代官衙の遺跡集合体で、国の史跡に指定されています。この遺跡群は、相模原台地の頂上に位置しており、古代の郡衙と郡寺に由来する遺構が含まれています。遺跡の周囲は、小出川に囲まれており、古代の交通の要所として機能していたことが検証されています。

遺跡は大きく二つのエリアに分かれており、西方遺跡とされる相模国高座郡の郡庁跡と、下寺尾廃寺跡（七堂伽藍跡）から構成されています。これらの遺構は紀元8世紀後半から9世紀前半にかけて活動しており、当時の祭祀の場や船着き場も確認されています。特に、発掘調査によって、古代の郡家に関連する多様な施設が近接して存在していたことが明らかとなりました。

発掘調査の経緯

2002年に行われた茅ヶ崎北陵高等学校の発掘調査で、郡庁跡と正倉跡が特定され、古代の竪穴建物や掘立柱建物などが発見されました。これらは当初、開発目的による事前調査から始まりましたが、発見された重要な遺構を保存する方針が取られました。

発掘によると、36棟の竪穴建物、19棟の掘立柱建物、4列の柵が確認されており、これらは7世紀後半に造られた集落の一部と考えられています。特に郡庁は南部に位置しており、変遷の過程が確認されていて、時期は7世紀末から8世紀前半に遡ります。

郡庁とその構造

郡庁の正殿は広い間取りを持ち、時期による改変がありました。8世紀中頃までに掘立柱塀で区画され、正殿や東脇殿、後殿が存在していました。これらの建物は、9世紀前半に廃絶したと考えられています。郡庁域内には正倉も存在し、掘立柱建物が配列されていました。正倉は郡庁の成立と同時期に建設されたと推測されています。

さらに、発掘調査によって、郡庁域の位置や範囲が明確になり、官衙の複雑な構造が次第に分かってきました。これにより、古代の政治・社会の様相が浮かび上がっています。

下寺尾廃寺跡の発見

下寺尾廃寺跡は、郡庁の南西約170メートルに位置しています。初めてこの寺の存在が知られたのは1941年ごろで、1957年には「七堂伽藍跡」という碑が建てられました。2000年度からは茅ヶ崎市教育委員会による本格的な発掘調査が始まり、寺院の建物配置が確認されました。金堂や講堂が特に注目され、これらの建物群は8世紀前半に完成したと推測されています。

出土した遺物には、銅製品や仏教関連の遺物が含まれ、国の工房によって建設支援が行われた可能性があります。これらの遺物は、当時の文化や宗教的背景を理解する上で重要な手がかりとなります。

史跡指定と保存計画

下寺尾官衙遺跡群は2015年に国の史跡に指定され、未来に向けた保存活用計画が立案されています。周辺には学校の敷地も含まれ、地域との関わりを大切にしながら保存が進められています。また、2019年には指定範囲が拡大され、さらなる歴史的資源の保護が図られています。

この遺跡群は、古代の地方官衙の典型を示す貴重な例であり、相模地域の歴史を知る上で欠かせない文化財であることが確認されています。

もう一度検索