正倉

正倉（しょうそう）について

正倉とは、日本の古代律令制度において、中央や地方の官公庁や寺院などの公的な施設に設けられた倉庫を指します。この倉庫は主に穀物や財物を保管する目的で利用されました。

中央と地方の正倉

中央では、大蔵省に納められる租庸調に関連する正倉が存在しました。一方、地方では最初に各郡が租税を納めるための正倉が設置され、これらは主に郡司によって管理されていました。その後、管理の権限が国司へ移ると、正倉も多くが国府に移されていきました。

正倉はその形状や収納物の種類に応じて多様になっています。形状別に見ると、高倉、円倉、長倉（または横倉）などがあり、構造で分けると、甲倉、各倉、板倉、丸木倉、土倉などに分類されます。また、収納物に基づいて不動穀倉、穎倉、粟倉、塩倉などの種類もあります。特に、側壁の木材が倉庫の四隅で交差する構造を持つ「校倉（あぜくら）」という形式もありました。これは、三角形構造の甲倉において一般的に使用されたため、後に両者が混同され、甲倉構造を持つ倉庫が「校倉造（あぜくらづくり）」と呼ばれるようになりました。

大規模な正倉

大きな正倉になると、複数の正倉がある一区画が囲まれることもあり、このような区域は「正倉院（しょうそういん）」と称されることがありました。例えば、東大寺内の正倉院は、元々数棟の校倉から構成されており、現在もそのうちの最大の校倉が正倉院宝庫として残されています。

地方の正倉の役割

地方における正倉は、官稲（かんとう）を保持する役割を果たし、基本的には国の管理の下で郡家に附属していました。例として、『出雲国風土記』に記載された意宇郡では、複数の地域に分散して正倉が設けられていました。松江市大庭町の団原遺跡は、その中の一つとされています。また、出雲郡では漆治郷や美談郷、飯石郡では三屋郷、須佐郷、仁多郡では三沢郷、横田郷、大原郡の屋代郷にも正倉が分かれて設置されていました。

地名としての「院」

薩摩国や大隅国、日向国など九州地方では、正倉に基づく「院」という行政区画が設定されました。これらの地名は、その後も存続し、地名や苗字として今に至るまで使用されています。

薩摩国の院の例

• - 伊集院
• - 入来院
• - 市来院
• - 牛山院

大隅国の院の例

• - 小河院
• - 加治木院
• - 鹿屋院
• - 賀生院

日向国の院の例

• - 島津院
• - 臼杵院
• - 飫肥院
• - 救仁院

このように、正倉は日本の古代において重要な役割を持ち、その影響が現在の地名や文化にも残っていることが分かります。

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