下館羽黒神社

茨城県筑西市の中心部、かつての下館城下町に位置する下館羽黒神社は、地域住民から「お羽黒さん」の愛称で親しまれている歴史深い神社です。正式な社名は羽黒神社ですが、地名をつけて下館羽黒神社、あるいは「下羽黒神社」と呼ばれることもあります。特に、筑西市下館地区の氏神として、そしてこの地に点在する「下館七羽黒」と呼ばれる七つの羽黒神社の中でも中心的な存在として、古くから篤い信仰を集めています。

由緒と歴史

当神社の創建は室町時代、文明13年（1481年）に遡ります。当時の下館城主であった水谷勝氏が、自身の領地の安泰と繁栄を願い、信仰の対象であった出羽三山より羽黒権現をこの地に勧請したことに始まります。勝氏は、この下館に加えて、領内であった現在の筑西市内の稲野辺、岡芹、外塚、下岡崎の四ヶ所にも新たに羽黒神社を建立しました。このうち稲野辺の社は、現在では竹島神社に合祀されています。また、岡芹に創建された社は、区別のために「上羽黒神社」と呼ばれています。

その後、水谷氏六代目の当主である水谷正村公は、さらに領地を広げ、現在の栃木県真岡市に久下田城を築城しました。正村公は、この新しい領地周辺にあたる、現在の筑西市口戸と真岡市大根田にもそれぞれ羽黒神社を建立しました。こうして、勝氏が最初に建立した五社（うち現存は下館、岡芹、外塚、下岡崎）と、正村公が建立した二社（口戸、大根田）を合わせて、七つの羽黒神社が成立し、これらが総称して「下館七羽黒」と呼ばれるようになりました。当神社は、この下館七羽黒の中でも最も歴史が古く、中心的な役割を担っています。

当神社の周辺は、かつて下館藩の城下町の中心地であり、南側に隣接する羽黒児童公園の敷地には、昭和の時代まで下館町役場が置かれていました。また、近年では、第4回沖縄国際映画祭の「地域発信型プロジェクト」に筑西市が選ばれ、2012年（平成24年）に公開された映画『またいつか夏に。』のロケーション撮影地としても使用されました。

境内社

境内には複数の境内社が祀られています。

愛宕神社: かつて当神社の近くにあった西郷谷村（にしごやむら）の鎮守として崇敬されていました。羽黒神社が創建される以前からこの地に存在していたと伝えられています。後に、下館市街地で大火が発生したことを受け、稲荷町にある稲荷神社にこの愛宕神社の分霊が祀られ、「田中稲荷愛宕神社」として現在に至っています。
日限天神社: 学問の神として知られる菅原道真公を祭神として祀っています。

主な祭礼

当神社の最も代表的な祭礼は、毎年7月下旬に筑西市下館地区の中心市街地で開催される下館祇園祭です。この祭りは当神社の例大祭として行われ、特にその勇壮な大神輿の渡御は関東でも有数とされ、多くの見物客で賑わいます。

文化財

境内には、長い歴史の中で伝えられてきた貴重な文化財が多数保管されています。

茨城県指定文化財

本殿: 現在の本殿は、寛永11年（1634年）に造営され、その後に享保15年（1730年）に改修が施されたものです。歴史的建造物として、平成14年（2002年）1月25日に茨城県の指定文化財となりました。
木造愛宕明神立像: 鎌倉時代末期に制作されたとされる、愛宕明神の木造立像です。昭和38年（1963年）8月23日に県指定文化財に指定されました。
絵馬: 寛永15年（1638年）に奉納された絵馬です。昭和38年（1963年）8月23日に木造愛宕明神立像と同日に県指定文化財となりました。
大袖鎧: 江戸時代中期に制作されたとみられる甲冑（鎧）の一部です。昭和39年（1964年）7月31日に県指定文化財に指定されました。

筑西市指定文化財

* 羽黒神社旧拝殿: 寛永11年（1634年）に本殿とともに造営され、享保16年（1731年）に改修が行われた建物です。かつての拝殿として、昭和61年（1986年）6月26日に筑西市の指定文化財となりました。

アクセス

下館羽黒神社へは、公共交通機関を利用するのが便利です。JR水戸線、関東鉄道常総線、真岡鐵道真岡線の各線が乗り入れる下館駅から、歩いて数分の距離にあります。駅からのアクセスが良いことも、多くの参拝者や観光客が訪れる要因の一つとなっています。

下館の歴史と文化の中心として、また地域の人々の心のよりどころとして、下館羽黒神社はその存在感を保ち続けています。

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