不空羂索観音

不空羂索観音について

不空羂索観音（ふくうけんさくかんのん）は、仏教における重要な菩薩であり、梵語ではアモーガパーシャと呼ばれます。この菩薩は、六観音または七観音の一尊に数えられ、信仰の対象として広く知られています。その名の通り、不空という言葉は「虚無ではなく」、「羂索」は捕縛のための縄を意味し、あらゆる衆生を救済する意図が込められています。

概説

不空羂索観音は、天台宗の経典においては真言宗系の准胝観音の代替として位置づけられ、六観音に含まれることがあります。一方で、両者をすべて数えて七観音とする場合もあります。彼の存在は、隋時代の6世紀後半に書かれた「不空羂索呪経」や、唐の菩提流志による「不空羂索神変真言経」に初めて記されています。

像容

不空羂索観音の像容については、多くの腕を持つ多臂形が一般的で、シカの毛皮をまとっているのが特徴です。この毛皮が、インドのヒンドゥー教で崇拝される神々を連想させる部分もあり、春日大社の主神タケミカヅチとの関連性も指摘されています。多くの歴史的遺物の中には、インドでの作例が多い一方で、中国や日本では数が限られており、特に有名なものには、インドネシアのシンガサリ朝のヴィシュヌワルダナ王の像があります。

日本における造像例

日本では、一面三目八臂の形で描かれることが一般的です。通常の像は立像または坐像で、胸元で手を合わせる姿が特徴です。手の中には羂索や蓮華、錫杖といった道具が含まれています。代表的な作品としては、東大寺法華堂（三月堂）の不空羂索観音立像や、興福寺南円堂の坐像が国宝として登録されています。また、新薬師寺近くの春日山不空院は、不空羂索観音を本尊とする寺院のひとつです。

修復と文化財指定

東大寺の不空羂索観音像は、日本初の現状維持修理法によって修復されたことが知られています。1906年には岡倉天心の弟子によって修復され、今日に至るまでその姿を保っています。文化財として指定されている不空羂索観音には、奈良時代から鎌倉時代にかけての作品が多数存在し、以下にその一部を紹介します：

• - 国宝：

- 乾漆不空羂索観音立像（東大寺）
- 木造不空羂索観音立像（広隆寺）
- 木造不空羂索観音坐像（興福寺）

• - 重要文化財：

- 木造不空羂索観音立像（大安寺）
- 木造不空羂索観音坐像（不空院）

これら多くの文化財は、不空羂索観音の存在が日本の文化および仏教信仰にどれほど影響を与えたかを物語っています。観音信仰は、心の安らぎや救いを求める人々にとって重要な存在であり、その教えは今も多くの人に受け継がれています。

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