不空院

不空院（ふくういん）

不空院は、奈良県奈良市高畑町に位置する真言律宗の寺院です。春日山という山号を持ち、本尊として不空羂索観音を祀っています。この寺院は、かつて「かけこみ寺」としての役割を果たし、現代では縁切り寺として広く知られています。

歴史

不空院の起源は古く、菅家本『諸寺縁起集』によれば、鑑真の住坊跡に建立されたと伝えられています。弘仁年間（810 - 824年）には、空海が興福寺南円堂（八角円堂）を建立する際、その雛形を不空院に建てたとされています。

鎌倉時代には、西大寺の叡尊、興福寺の円晴、唐招提寺の覚盛、西方院（唐招提寺子院）の有厳といった高僧たちが集まり、戒律を講じたと伝えられています。室町時代には、興福寺の二大院家の一つである大乗院の末寺となりました。近世には、本堂に弁才天が安置され、院号の不空院が転じて福院とも呼ばれたことから、「かけこみ寺」として奈良町の芸妓たちの信仰を集めました。

1854年の安政の大地震で堂宇が倒壊しましたが、大正時代に三谷弘厳によって再興されました。

境内

不空院の境内には、以下の見どころがあります。

井上皇后御霊塚
縁結びの祠
縁切りの祠

文化財

重要文化財

木造不空羂索観音坐像: 寄木造、漆箔、玉眼を用いた像高103.9cmの仏像で、鎌倉時代の作です。興福寺出身の僧侶である円晴が、興福寺南円堂を模して八角円堂を建て、本尊としてこの不空羂索観音像を安置したという伝承があります。

所在地

〒630-8301 奈良県奈良市高畑町1365

交通アクセス

奈良駅から市内循環バスで10分、「破石町」下車、徒歩10分

周辺情報

不空院の周辺には、以下の観光スポットがあります。

日輪山新薬師寺
志賀直哉旧居
奈良教育大学

参考文献

『日本歴史地名大系 奈良県の地名』、平凡社、1981年
毎日新聞社編『仏像めぐりの旅 2 奈良（奈良公園・西ノ京）』、毎日新聞社、1992年

外部リンク

* 不空院 | なら旅ネット

不空院は、その長い歴史の中で様々な役割を果たしてきた寺院です。特に、縁切り寺としての側面は、現代においても多くの人々の関心を集めています。奈良を訪れる際には、ぜひ不空院に足を運び、その静謐な雰囲気を感じてみてください。

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