丐幇

丐幇（かいほう）は、中国の武侠小説に登場する、乞食によって構成された独特な集団、幇会です。単なる生活共同体や互助組織としてだけでなく、独自の武術を体得し、義侠の精神を重んじる武林の勢力としても知られています。構成員は中国全土に広がり、武林において大きな影響力を持つ存在とされています。

丐幇は、基本的に正義の組織として描かれることが多く、特に宋、元、清といった異民族による侵略に晒された動乱期には、愛国心や民族主義的な意識を強く持ち、侵略者への抵抗運動に積極的に参加する傾向があります。しかし、時代設定が曖昧な作品や歴史色が薄い作品では、武林の覇権を巡って他の門派と対立することも少なくありません。

金庸の武侠小説における丐幇

金庸の作品群では、丐幇は物語において重要な位置を占めています。『射鵰英雄伝』、『神鵰剣俠』、『倚天屠龍記』の三部作や、『天龍八部』などの作品で、丐幇は物語の展開に大きな影響を与えています。

丐幇の長である幇主は、その象徴として代々「打狗棒（だこうぼう）」という竹の棒と、それを用いた「打狗棒術（だこうぼうじゅつ）」という武術を継承しています。また、構成員はそれぞれ身分に応じて、所持する袋の数が定められているという特徴があります。

歴代の幇主

丐幇は、長い歴史の中で多くの幇主を輩出してきました。以下に、主な幇主を時代ごとに紹介します。

北宋時代

汪剣通（おうけんつう）: 『天龍八部』に登場する幇主。
喬峯（きょうほう）: 『天龍八部』に登場。丐幇の英雄。
荘聚賢（そうしゅうけん）: 『天龍八部』に登場。ただし、これは偽名であり、本名は游坦之（ゆうたんし）。

南宋時代

第17代：銭幇主（ぜにほうしゅ）、石幇主（せきほうしゅ）: 『射鵰英雄伝』に登場する。
第18代：洪七公（こうしちこう）: 『射鵰英雄伝』に登場する、義侠心に厚い人物。
第19代：黄蓉（こうよう）: 『射鵰英雄伝』、『神鵰剣俠』に登場する。聡明で武術にも長ける。
第20代：魯有脚（ろゆうきゃく）: 『神鵰剣俠』に登場する。
第21代：耶律斉（やりつけい）: 『神鵰剣俠』に登場する。

元時代

史火龍（しかりゅう）: 『倚天屠龍記』に登場する。
史紅石（しこうせき）: 『倚天屠龍記』に登場する。

明時代

解風（かいふう）: 『秘曲 笑傲江湖』に登場する。年代は不詳だが、明代と推測される。

清時代

范幇主（はんほうしゅ）: 『雪山飛狐』、『飛狐外伝』に登場する。

丐幇は、武侠小説の世界において、単なる乞食集団ではなく、正義と義侠を重んじる重要な存在として描かれています。その複雑な組織構造や歴史は、多くの読者を魅了し続けています。

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