世界スカウト記章

世界スカウト記章：スカウト運動の象徴

世界スカウト記章は、世界スカウト機構（WOSM）の公式エンブレムであり、世界中のスカウトと指導者がスカウト運動の一員であることを示すために着用されます。この記章は、スカウト運動の理念と歴史を体現しており、そのデザインと使用法は時代とともに進化してきました。

デザインの起源と変遷

世界スカウト記章の起源は、ロバート・ベーデン＝パウエル卿が1897年にインドで訓練した斥候に授与した、フルール・ド・リス（ユリの花の紋章）の形をしたバッジに遡ります。その後、1907年のブラウンシー島での実験キャンプで、参加者全員に銅製のフルール・ド・リスバッジが贈られました。

ベーデン＝パウエルは、著書『スカウティングフォアボーイズ』でスカウトバッジのデザインを紹介し、フルール・ド・リスを北を示す象徴として、スカウトが義務を果たし、他者を助けるための道標となるべきだと述べました。初期のフルール・ド・リスには、「Be Prepared（備えよ）」というモットーが添えられていました。

その後、フルール・ド・リスのデザインは進化し、他者への奉仕、神への義務、スカウトのおきてへの従順を象徴する3つの羽飾りが加えられました。これらの指針は、スカウト運動に参加する新人スカウトが立てる誓いにも反映されています。さらに、知識と真実を象徴する2つの五芒星と、スカウティングの家族を象徴する「縄」が追加されました。

1939年には、J・S・ウィルソンによって国際スカウトバッジが導入されました。これは、紫色の背景に銀色のフルール・ド・リスが配置され、周囲の円形枠に五大陸の名前が銀色で記されていました。このバッジは、国際委員会のメンバーや事務局スタッフに限定して着用されました。

1955年の第8回世界スカウトジャンボリーでは、元ボーイスカウトギリシャ連盟委員長のデメトリオス・アレクサトスによって、現在世界中のスカウトの制服に使用されているデザインが発表されました。このデザインでは、ロープがフルール・ド・リスを囲み、バッジの下部で本結びで結ばれています。ロープは世界スカウト運動の家族を象徴し、結び目はその団結の強さを表しています。また、矢じりとロープの白は純潔を、貝紫色はリーダーシップと奉仕を象徴しています。

2024年8月には、世界スカウト機構によって新たな記章が導入されました。

各連盟での使用

世界スカウト記章は、各国のスカウト連盟によって様々な方法で使用されています。

スカウト連盟： 加盟員章として使用され、ビーバー、カブ、スカウト、エクスプローラースカウト、スカウトネットワークの各部門への入会時に授与されます。
ボーイスカウトアメリカ連盟（BSA）： ワールド・クレストと呼ばれ、世界規模のスカウト運動の象徴として制服に着用されます。1956年から1991年までは、国際スカウティングイベント参加者への賞として使用されていました。
* 南アフリカスカウト連盟： 新しいメンバーが加盟する際に授与され、ユニフォームの左前ポケットに着用します。フルール・ド・リスの五芒星は、スカウトの誓いの10項目を象徴するとされています。

世界スカウト記章は、スカウト運動の理念と結束を象徴する、重要なエンブレムです。そのデザインと使用法は、スカウト運動の歴史と進化を反映しています。

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