世界女族物語

世界女族物語（せかいじょぞくものがたり）

『世界女族物語』（原題：La Donna Nel Mondo、英題：Woman of the world）は、1962年にイタリアで製作されたドキュメンタリー風のモンド映画です。日本では翌年の1963年3月9日に劇場公開されました。

概要

本作は、モンド映画の代表作として知られる『世界残酷物語』を手がけたグァルティエロ・ヤコペッティが監督・脚本を務めました。前作が世界の奇妙な出来事や風習を広く取り上げたのに対し、本作では特に世界各地の女性に焦点を当てています。基本的なコンセプトは『世界残酷物語』と同様であり、世界の様々な文化や習慣をショッキングかつセンセーショナルな視点から紹介することで、観客の好奇心を刺激するスタイルが特徴です。特定のテーマ（この場合は「世界の女性」）を通じて、普段目にすることのない風習や社会のあり方を見せ物として提示しています。

内容

映画は世界各地を巡り、白人、黒人、アジア人など、多様な人種の女性たちの生活や習慣を描き出します。その内容は多岐にわたり、観る者に強烈な印象を与えます。

例えば、アルジェリアのベドウィン族の女性たちが、独特な美容法として動物の糞で作ったクリームを顔に塗る光景。貞操帯の装着を強いられる女性たちの描写。不貞行為の罰として殺害され、その墓が残されているという話。ニューギニアのキンブ族では、妊娠した女性が不浄な存在と見なされ、出産までの9ヶ月間を豚小屋で過ごすという驚くべき風習。また、ヨーロッパの文化として存在する、葬儀などで意図的に悲しみを表現するために雇われる「泣き女」たちの姿。さらに、社会的な現象として、各地で行われる美人コンテストの華やかさとその裏側、そして軍隊に所属し訓練に励む女性兵士たちの厳しい日常なども紹介されます。

これらの描写は、時に視聴者に強い嫌悪感や衝撃を与える一方で、世界の多様な文化の一側面を示しているとも言えます。しかし、その取り上げ方や編集は、しばしばエキゾチックな見世物としての側面が強調されており、特定の文化や人々に対するステレオタイプな視点や、女性に対する差別的な視点が含まれているとの批判を受けることがあります。

日本での状況

日本では1963年の公開後、しばらくの間は広く知られていました。テレビ放送も行われたことがあり、特に1976年11月10日には日本テレビの『水曜ロードショー』で一度、単独作品として放送されています（この際のナレーションは俳優の西村晃が担当しました）。

しかし、作品が持つ前述のような視点、特に現代においては女性に対する差別的と見なされる描写が多く含まれていることから、社会的な評価が変化しました。そのため、1976年の単独放送以降、地上波はもちろん、BSやCSといった衛星放送でも再放送された記録は確認されていません。また、VHS、ベータマックス、DVD、ブルーレイディスクといった様々な時代の映像ソフトとしても、現在に至るまで正式な発売は行われていないのが現状です。

ただし、例外として、1978年8月23日に同じく『水曜ロードショー』内で放送された際には、『世界残酷物語』とその続編を含むいわゆるヤコペッティ3部作の一部を再編集し、『世界残酷物語/世界女族物語』と題されたミックス版として放送されたことがあります。この時のナレーションはタモリが担当しました。

このように、『世界女族物語』は、世界の奇習や女性のあり方をセンセーショナルに描いたモンド映画として一時代を築きましたが、現代においてはその表現方法や視点が問われ、メディアでの露出やソフトの流通が極めて限られている作品となっています。

スタッフ

監督・脚本：グァルティエロ・ヤコペッティ
撮影：アントニオ・クリマティ、ベニート・フラッタリ
音楽：リズ・オルトラーニ、ニーノ・オリヴィエロ

関連項目

世界残酷物語
モンド映画
ウーマン・リブ
フェミニズム
女性蔑視

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