世界征服者の歴史

世界征服者の歴史

『世界征服者の歴史』（せかいせいふくしゃのれきし）は、ペルシア語で「タリーヒ・ジャハーン・グシャー」として知られ、モンゴル帝国の歴史を語る上で不可欠な歴史書です。この作品は、モンゴル帝国の歴史家であり政治家であるジュヴァイニーによって1260年に完成され、特にモンゴル帝国の成立から1257年までの経緯を包括的に記録しています。

ジュヴァイニーとその動機

ジュヴァイニーは、1252年にフレグの命令でモンゴル帝国の首都カラコルムに派遣され、その広大な領土に驚かされました。彼はその後、友人からの勧めを受けて、モンゴル帝国の成り立ちや歴史を記した文書の執筆を始めました。この歴史書を通じて、彼は自己の体験や観察を反映させ、帝国の変遷を記録することになりました。

内容と構成

この歴史書は全3巻から構成され、モンゴル帝国の成立とその周辺地域の歴史が描かれています。第1巻では、チンギス・ハーンからグユク（1248年没）までのモンゴル帝国の設立が詳細に扱われ、第2巻ではモンゴルに征服されたホラズム・シャー朝の歴史が中心となります。特に、アラーウッディーン・ムハンマドやジャラールッディーン・メングベルディー親子の物語が重要視されています。

第3巻では、アラムートを拠点としたニザール派に焦点が当てられ、彼らがどのような組織を持ち、どのように戦ったのかが描かれています。ジュヴァイニーはアラムート攻城戦に参加し、その後与えられた図書館の資料を参考にしながら執筆を進めたと考えられています。このため、第3巻は特に信憑性の高い情報源として注目されています。

文体と影響

作品の文体は、散文だけでなく、韻文や詩文も取り入れたものです。アラビア語やペルシア語による巧妙な表現が際立っており、後の歴史家たちに大きな影響を与えました。この作品は、ティムール朝時代の叙述形式のひとつの規範とされ、後の歴史書との関連性が強いです。

また、ラシードゥッディーンによる『集史』は、約半世紀後に成立したもので、『世界征服者の歴史』からの情報を多く引用しています。これらの歴史書は、ペルシア語で書かれた歴史文学の中でも独特の存在として知られ、今日においてもその学術的価値は高いものとされています。

結論

『世界征服者の歴史』は、モンゴル帝国の歴史を知る上で非常に重要な資料であり、ジュヴァイニーの観察と経験が色濃く反映されています。この作品を通じて、当時の民族や宗教間の闘争、そしてその背景となる文化的要素が理解できるため、歴史研究者にとって欠かせない一冊となっています。

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