世界産業労働組合

世界産業労働組合（IWW）

世界産業労働組合、英語ではIndustrial Workers of the World（IWW）は、1905年にアメリカのシカゴで設立された国際的な労働組合です。この組織は、すべての労働者が一堂に集まること、そして賃労働制度の廃止を訴えることを主な目的としています。

結成の背景

IWWの結成は、当時のアメリカ労働運動における保守的なアプローチに対する反発から始まりました。特に、アメリカ労働総同盟（AFL）のリーダーであるサミュエル・ゴンパーズが推進していた労使協調主義に異議を唱えたビル・ヘイウッドやダニエル・デ・レオンなどの労働運動家たちが、AFLから追放された社会主義者や無政府主義者と共に、IWWを結成しました。

戦術に関する論争

IWW内部では、労働者の解放を目指すための戦術についての意見が分かれました。デ・レオンを支持する一派は、政治行動が最も重要だと主張したのに対し、ヘイウッドらは直接的な行動、特にストライキやボイコットなどの手段を通じての闘いを訴えました。最終的には直接行動派が勝利し、1908年にデ・レオン派は組織を離脱しました。

風雲急を告げる活動

1912年、IWWは約5万人の組合員を抱え、北西部の港湾労働者や中部の農民から多くの支持を受けていました。組織は、マサチューセッツ州ローレンスやニュージャージー州パターソンで大規模なストライキを展開し、150以上のストライキに参加しました。また、非熟練労働者や移民労働者、さらにアフリカ系アメリカ人労働者も多く参加し、特にアフリカ系労働者は最大で5万人にも達しました。1915年には農業労働者組合も設立し、地域社会での連携を強化しました。

政府の圧力と弾圧

IWWの活動は政府から激しい弾圧を受けました。特に1914年には組合員の歌手ジョー・ヒルが不当に告発され、1915年に処刑されるという事件が起きました。1916年にはエヴェレット虐殺と呼ばれる暴力事件が発生し、組合員たちが武装集団によって襲撃され、多くの死者を出しました。IWWは第一次世界大戦への参加を拒否し、戦争に反対する決議を可決しましたが、戦争が始まると拡大する政府の弾圧に直面します。

1917年、IWWの本部や全国の支部に対して一斉捜索が行われ、多くの組合員が逮捕されました。政府は、彼らが戦争に対する妨害行為を行う恐れがあると主張しましたが、具体的な証拠の提出には至りませんでした。それでも、1918年には多くのメンバーが有罪判決を受け、厳しい刑に処されました。

戦後の動き

第一次世界大戦終了後、IWWは労働者たちによる政治犯の釈放を求める運動に支援されましたが、彼らの声は十分に届きませんでした。1923年、クーリッジ大統領が戦時中の政治犯に恩赦を与えるまで、長い時間が過ぎました。

著名なメンバー

IWWには多くの著名なメンバーがいました。ビル・ヘイウッドやダニエル・デ・レオン、ユージン・V・デブスをはじめ、ヘレン・ケラーやジョー・ヒルといった著名人たちがその活動に関与しました。これらのリーダーたちは、IWWを通じて労働者の権利や社会正義のために尽力しました。

終わりに

IWWは現在も活動を継続しており、約2000人のメンバーが在籍しています。歴史の中で多くの逆境に立ち向かってきたこの労働組合は、労働者の団結を基盤にした運動を続けているのです。

もう一度検索