ユージン・V・デブス

ユージン・ヴィクター・デブスについて

ユージン・ヴィクター・デブス（1855年11月5日 - 1926年10月20日）は、アメリカの政治家、労働運動活動家であり、アメリカ社会党から5回にわたり大統領選挙に立候補した著名な人物です。彼の生涯は、労働者の権利や社会正義のための戦いで彩られており、その影響力は今でも語り継がれています。

叩き上げの組合活動

デブスはフランスのアルザスからの移民の子として、インディアナ州テレホートで生まれました。若い頃から鉄道労働者（機関士）として働き始め、17歳の時に鉄道業界に身を投じました。1874年には組合活動に携わり、その才能を発揮し始めます。1884年にはインディアナ州議会の民主党議員に選出され、労働者の権利を擁護する政治家としての道を歩み始めました。

1893年には従来の保守的な組合を離脱し、アメリカの初の産業別労働組合であるアメリカ鉄道組合を結成。1894年のグレート・ノーザン鉄道でのストライキを勝利に導きましたが、その年に発生したプルマン・ストライキは政府と軍の弾圧を受け、失敗に終わりました。この一連の経験がデブスに深く影響を与え、獄中ではカール・マルクスの著作を読み、社会主義に目覚めました。

全国的な労働運動と政治へ

1895年に釈放されたデブスは、プルマン・ストライキの経験を基に社会民主党を結成し、1900年の大統領選挙に立候補。以降、1904年、1908年、1912年の大統領選挙にも挑み、1912年の選挙では6%の得票率を記録しました。デブスは1905年にもアメリカ労働総同盟（AFL）の労使協調を批判し、直接行動を重視する世界産業労働組合（IWW）の創設メンバーの一人となります。この期には、労働運動の中で主流となっていた直接行動とともに、政党活動も重視するデブスのアプローチは徐々に孤立していきました。

社会党は、時代の変化とともに他の政治勢力に取り込まれ、大きな影響を持つことができなくなりました。特にウッドロウ・ウィルソン大統領のもとで進歩的な政策が進む中、社会党の個性は失われていったのです。

反戦論と逮捕・収監

第一次世界大戦が勃発すると、アメリカの世論はタカ派に傾き、1918年にはデブスが戦争に反対する演説を行ったことで、諜報活動防止法違反として逮捕されました。最高裁判所で争ったものの、1919年4月にはジョージア州アトランタの刑務所で10年間の懲役を言い渡されました。獄中でも彼はアメリカ社会党から大統領候補として立候補したものの、反戦的な立場が影響し、得票率は3.4%にとどまりました。しかし、多くの有権者が彼の姿勢に支持を寄せ、票が増加したことも事実です。

デブスは1921年にハーディング大統領からの恩赦で釈放され、その後3年後の1924年にはノーベル平和賞に推薦されました。1926年には健康が悪化し、サナトリウムに入院。しかし、彼が受けた治療は期待したものとは異なり、病状はさらに悪化しました。10月20日に彼は70歳で亡くなりました。デブスの死後、アメリカ社会党は当時の政治情勢に影響されて勢力を失っていきました。

彼の生涯と功績は、その後の労働運動や政治活動に多くの影響を与えています。

もう一度検索