世良美術館

神戸の隠れ家美術館、世良美術館の閉館

兵庫県神戸市東灘区に位置する世良美術館は、2025年3月をもって閉館することが発表されました。1992年の開館以来、多くの美術愛好家を魅了してきた同館の閉館は、地域文化に大きな影響を与える出来事となるでしょう。

この美術館は、昭和を代表する洋画家である小磯良平に師事した女流画家、世良臣絵氏によって設立されました。世良氏の油彩画、水彩画、そしてガラス絵など、多様な作品を鑑賞できるのが特徴です。館内は、地下1階から2階まで螺旋階段で繋がった独特の空間設計となっており、瀬戸本淳氏による建築デザインは神戸市建築文化賞など数々の賞を受賞しています。

1階サロンには世良氏の油彩作品が、地下1階には水彩作品が展示されています。2階にはプチギャラリーがあり、世良氏のガラス絵が展示されるとともに、小磯良平氏をはじめ、田村孝之介氏、小松益喜氏、竹中郁氏など、神戸ゆかりの作家たちのデッサン小品なども鑑賞できます。83名収容可能なサロンでは、これまでも毎週のように音楽リサイタルやコンサートが開催され、地域住民の文化活動の中心地としての役割も担ってきました。

美術館の建物は、地上から伸びる塔のような螺旋階段が印象的で、地下から2階までを繋いでいます。この階段を上り下りしながら、それぞれの階に展示された作品を巡るという、独特の鑑賞体験が魅力でした。

世良氏は2009年に亡くなられましたが、その後もスタッフによって運営が続けられてきました。しかし、長年にわたる運営の中で資金繰りの問題が深刻化し、閉館という苦渋の決断に至ったとのことです。閉館は世良氏の17回忌にあたる2025年3月を予定しており、一般の入館は2024年12月末で終了します。2025年1月から3月までは、既に企画されているイベント参加者のみの入館となります。

世良臣絵氏の略歴は次の通りです。

1911年 東京麻布に生まれる
1948年 小磯良平に師事
1963年 一水会会員
1968年 銀座・日動サロンにて個展
1988年 サージ・マルジス賞受賞
1989年 神戸・大丸百貨店にて個展、アートワールド賞受賞
1992年 世良美術館開館
2001年 亀高文子記念・赤艸社賞受賞

世良美術館は、単なる美術館としてだけでなく、地域文化の拠点としての役割も果たしてきました。閉館は、地域の文化活動に大きな影響を与えると共に、多くの美術愛好家にとって残念な出来事です。

【施設概要】
展示スペース：B1F～2F
サロン
所在地：〒658-0047 兵庫県神戸市東灘区御影2丁目5-21
交通：阪急御影駅徒歩3分、阪神御影駅徒歩15分

【周辺情報】
世良美術館周辺には、香雪美術館、白鶴美術館、豊雲記念館、倚松庵（谷崎潤一郎旧居）、弓弦羽神社など、多くの文化施設があります。これらの施設と合わせて、神戸の文化に触れることができる貴重な場所でした。

閉館を前に、世良美術館の貴重なコレクションを鑑賞する機会を逃さず、この独特の空間と、そこに込められた情熱を感じてみてはいかがでしょうか。

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