豊雲記念館

豊雲記念館：秘められた芸術の宝庫

兵庫県神戸市東灘区に佇む豊雲記念館は、現代生け花の先駆者として知られる小原流三世家元、小原豊雲氏の功績を称え、1970年に「小原流芸術参考館」として開館しました。その後、1993年に改装を経て現在の美術館へと生まれ変わりました。

この美術館の最大の特徴は、小原豊雲氏が収集した約4,000点もの美術コレクションです。その約60%を、アンデス文明期の貴重な遺物が占めています。精緻な鳥形壺や髑髏人形壺、神人文様を織り込んだ外套衣片など、紀元前数世紀から紀元後数世紀にかけてのアンデス地域の文化を深く理解できる資料が数多く展示されていました。これらに加え、豊雲氏の作品や映像資料、更には民俗学者宮武辰夫氏から寄贈された東南アジアの民俗資料なども収蔵されており、その多様性と規模は、個人美術館としては類を見ない充実ぶりでした。

館内は、著名な建築家である清家清氏による設計で、地下1階、地上3階建ての建物です。1階にはエントランスと小原豊雲氏の作品を展示する部屋、2階にはアンデス文明の遺物を中心とした展示室と、小原流に関する資料室がありました。地下1階には、東南アジアの民俗資料が展示されていたとのことです。展示デザインは江藤暢英氏が手掛け、洗練された空間で鑑賞することができました。

豊雲記念館は、その建築と展示内容において高い評価を受け、神戸市建築文化賞（1974年）、ひょうご文化100選（1980年）、神戸建築百選（1993年）など数々の賞を受賞しています。

開館当初は、春と秋の2週間は一般公開され、それ以外の期間は予約制で公開されていました。開館時間は10時～16時。アクセスは阪急神戸線または阪神本線御影駅から徒歩あるいはバスで行くことができました。

しかし、残念ながら2010年以降は一般公開が中止されており、現在、これらの貴重なコレクションを目にすることはできません。現在、内部の状況やコレクションの保存状態など詳細な情報は公開されていません。

豊雲記念館は、小原豊雲氏の芸術のみならず、アンデス文明や東南アジアの文化に触れることができる貴重な機会を提供していました。その閉鎖は、美術愛好家にとって大きな損失と言えるでしょう。いつか再び、この秘められた芸術の宝庫が開かれることを願わずにはいられません。

主な所蔵品の一例（展示されていたもの）

鳥形壺（アンデス・チャビン文化期、紀元前4世紀）
黒色陶ヂヤガーあぶみ形壺（アンデス/チャビン文化期、高さ21.5cm）
髑髏人形壺（ペルー、ワリ期、10世紀頃）
神人文縫取外套衣片（ペルー、ワリ期、10世紀頃、9cm×62.5cm）
鳥文縫編縁飾片（ペルー、ナスカ期、1世紀頃、4cm×29cm）
渦巻刺突文壷（ペルー、チャビン期、紀元前4世紀-紀元前2世紀頃、23cm×13cm）
果実形壷（ペルー、チャビン期、紀元前9世紀-紀元前8世紀頃、29.4cm×13.8×13.3cm）
輪編貫頭衣（早期イカ、紀元前6世紀）
舞踏劇仮面（バリ島、20世紀）

交通アクセス

阪急神戸線 御影駅 徒歩5分
阪神本線 御影駅から市バス19系統「深田池」下車 徒歩5分

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