倚松庵

倚松庵：文豪谷崎潤一郎の足跡と昭和初期の建築

倚松庵は、兵庫県神戸市東灘区に現存する歴史的建造物であり、文豪谷崎潤一郎が昭和11年から昭和18年まで居住した旧居として広く知られています。谷崎潤一郎の代表作『細雪』の執筆地であったことから、『細雪の家』の愛称でも親しまれています。庵号の由来は、谷崎潤一郎の妻である松子夫人の名前にちなみます。

建造と移築：歴史と景観の変化

倚松庵は、1929年（昭和4年）、現在の六甲ライナー魚崎駅付近に和風木造建築として建てられました。谷崎潤一郎が居住していた当時の地主は、サッカー日本代表として活躍した後藤靱雄氏でした。しかし、1986年、倚松庵の周辺地域に神戸新交通六甲アイランド線の建設が計画されると、計画地の地盤の脆弱性や景観破壊への懸念から、住民訴訟へと発展しました。結果、1990年（平成2年）、神戸市は建設を強行し、倚松庵は現在の東灘区内の地へと移築されました。この移築によって、倚松庵周辺の景観は大きく変化しました。興味深いことに、5年後に発生した兵庫県南部地震では、アイランド線の橋脚が損壊した一方、移築された倚松庵は被害を免れました。これは、移築前の地盤の脆弱性に関する専門家の指摘が的中したことを示しています。

「倚松庵」という名称の建物は過去に6軒存在しましたが、谷崎潤一郎の居住期間の長さから、一般的にこの旧居を指すのが通例となっています。

館内の様子：谷崎家の一端

倚松庵は、木造瓦葺二階建ての建物で、延床面積は148.92㎡です。館内は、1階に応接間（洋間）、西側の部屋（洋間）、和室2室、浴室、台所が配置されています。2階には、「幸子の部屋」（『細雪』に登場する二女・幸子＝松子夫人＝の部屋）、「悦子の部屋」、「こいさんの部屋」と名付けられた和室があります。これらの部屋は、谷崎家の人々の生活を偲ばせる貴重な空間となっています。

建築概要とアクセス情報

倚松庵周辺：文化と自然

倚松庵周辺には、白鶴美術館、香雪美術館、世良美術館、豊雲記念館といった文化施設や、灘中学校・高等学校、住吉川といった自然豊かな環境が広がっています。これらの施設と合わせて訪れることで、より充実した観光体験が得られます。

参考文献と関連情報

倚松庵に関する詳しい情報については、神戸市公式ウェブサイトや神戸観光局のウェブサイトを参照することをお勧めします。また、谷崎潤一郎やその家族、そして昭和初期の建築様式に興味のある方にとって、貴重な学習の機会となるでしょう。

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