竹中郁

竹中郁（たけなか いく）

1904年4月1日、兵庫県神戸市に生まれた詩人、竹中郁（本名：育三郎）は、日本のモダニズム詩を牽引した人物として知られています。裕福な問屋の家に生まれましたが、1歳の時に紡績用品商の竹中家の養子となりました。兵庫県立第二神戸中学校、関西学院大学文学部英文学科を卒業後、詩作の道へと進みます。

初期の活動とモダニズム詩への傾倒

中学校時代から北原白秋に傾倒し、白秋が主宰する雑誌『近代風景』や『詩と音楽』で詩人としてのキャリアをスタートさせました。1924年には、北川冬彦や安西冬衛ら「亜」のグループと交流し、モダニズムのスタイルに影響を受けます。1925年には、初の詩集『黄蜂と花粉』を発表。1924年から1926年までヨーロッパに留学し、帰国後の1926年には近藤東らの勧めで『詩と詩論』に参加しました。

モダニズム詩の代表作「ラグビイ」

1932年に刊行された詩集『象牙海岸』に収録されている「ラグビイ」は、当時の流行であったシネポエムのスタイルを取り入れた作品で、モダニズム詩の代表的な成果の一つとして高く評価されています。しかし、彼の作品には単なるモダニズム的な都会趣味だけでなく、洗練された抒情が常に根底にあり、モダニズム詩の形式主義的な傾向とは一線を画していました。

戦後の活動と児童詩への貢献

戦後は、詩作活動と並行して雑誌『きりん』を創刊・編集し、児童詩の分野での指導・育成に尽力しました。また、兵庫県内の学校を中心に数多くの校歌の作詞も手がけました。

その他の活動と晩年

竹中郁は、詩作や児童詩の指導に加え、多くの著作や編著を残しています。詩集としては、『黄蜂と花粉』、『枝の祝日』、『一匙の雲』、『象牙海岸』、『署名』、『竜骨』、『動物磁気』、『そのほか』、『ポルカマズルカ』などがあります。また、『子ども闘牛士 竹中郁少年詩集』では、第25回日本児童文学者協会賞特別賞を受賞しました。詩集の他にも、『子供は見ている その詩でとらえた生活の顔』、『子どもの言いぶん』などの著作があります。晩年は、1982年3月7日に脳内出血のため神戸中央市民病院で亡くなりました。墓所は神戸市能福寺にあり、戒名は春光院詩仙郁道居士です。

関連施設

神戸文学館には竹中郁コーナーが設けられ、彼の書斎の一部が再現されています。また、世良美術館では竹中郁の小品が常設展示されています。

その他の業績

竹中郁は、大阪近鉄バファローズの球団歌である「近鉄バファローズの歌」の作詞や、関西電力の社歌「呼ぼうよ 雲を」の作詞も手がけました。

交流のあった人物

芥川龍之介の自殺直前には自宅を訪問し、会見したほか、パリではマン・レイと面会し、自身のシネポエム『ひとで』を紹介しました。


竹中郁は、その生涯を通じて、詩人としての才能を発揮し、多くの人々に影響を与えました。彼の作品は、今もなお多くの人々に愛され続けています。

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