中井悦雄

中井 悦雄（なかい えつお）

1943年6月24日、大阪府に生まれた中井悦雄は、1960年代の日本プロ野球界で注目を集めた選手です。彼は、大阪府にある大鉄高等学校（現:阪南大学高等学校）で、1960年に春の選抜大会に出場し、その才能を見せつけました。チームメートには伊藤幸男や小野坂清らが名を連ね、彼らと共に活躍しましたが、初戦で敗れたことで悔しい思いを味わうこととなります。

高校卒業後、中井は関西大学に進学しますが、すぐに中退し、1963年に阪神タイガースに入団しました。入団した年、彼はファームで数多くの試合に出場し、ウエスタン・リーグでは13勝1敗を記録し、優秀な防御率と勝率を誇りました。さらに、最多勝も獲得し、9月には一軍での初登板を果たします。

初登板では、巨人戦で名選手王貞治を三振に打ち取り、強烈な印象を残しました。その後の大洋戦では、8回からの登板でプロ初勝利を飾り、続けて翌日の試合で初先発に挑戦。8安打を許しながらも見事に完封勝利を達成します。この活躍により、彼はプロ野球界において期待の若手選手としての地位を確立します。

特に彼の記録的なパフォーマンスは、デビューから31イニング連続無失点というものであり、これは当時のセ・リーグ記録とされ、2023年には阪神・村上頌樹によって同じ記録が更新されています。このような素晴らしいスタートを切った中井ですが、彼のキャリアはその後、交通事故による負傷が影響し、伸び悩むこととなります。

1965年のオフ、彼は自由契約となり一時的に野球界を離れますが、1966年に阪神に復帰します。しかし、この復帰後は一軍登板の機会に恵まれることはありませんでした。1968年には西鉄ライオンズに移籍し、そこで先発投手として起用されるものの、結果を残すことはできず、中継ぎ投手としての道を歩むことになります。1970年には自己最多の42試合に登板し、その姿勢は評価されましたが、1971年のシーズンをもって現役を引退しました。

現役引退後は会社員として生活を送りましたが、1979年には阪神タイガースの二軍投手コーチ補佐として再び野球の世界に戻りました。しかし、その同年8月23日に心不全で急逝。中井はわずか36歳の若さでこの世を去ることとなりました。彼の野球人生は短いものでしたが、多くの人に記憶される選手であったと言えるでしょう。

中井の投球スタイルは、特にカーブとシュートが主な球種であり、彼のストライクゾーンでの駆け引きは多くの打者を苦しめました。日本の野球界において、彼は決して忘れられない選手の1人です。

もう一度検索