中体西用

中体西用とは

中体西用（ちゅうたいせいよう）は、中国の清代末期、1890年代に論じられた思想であり、洋務運動の基盤となったスローガンです。この考え方は、中国の伝統的哲学概念である「体」と「用」に基づいています。「体」とは本体を指し、「用」はその作用を意味します。

概要

当時の洋務派官僚の中には、中国の儒教を中心に据えた伝統的な学問や制度を基盤とし、それを強化する手段として西洋の技術や文明を活用すべきだという意見がありました。この考え方は、1840年のアヘン戦争や1857年から始まったアロー戦争で清が西洋諸国に敗北したのを契機に、特に漢人官僚から強く支持されました。

しかし、清朝の政治体制は絶対的な権力を持つ皇帝によって支配されていたため、従来の儒教に基づく価値観も強固であり、西洋の技術を導入することだけで皇帝の権限を維持しつつ軍事力を強化できると考えられていました。この理念の下で、清朝では多くの近代的な施設が建設されました。

しかし、日本が憲法を制定し立憲君主制を採用したのに対して、清は1894年からの日清戦争で日本に敗北したことで、中体西用に基づく洋務運動の限界が明らかになりました。この結果、清朝では改革派官僚が政治体制の改革に着手しようとした変法自強運動や、孫文らによる清朝打倒を目指す革命運動に向かって急進化していきました。

歴史的背景

中体西用という思想を最初に唱えたのは馮桂芬です。彼は1861年に『校邠廬抗議』を著し、中国の伝統的な倫理や常識を基本とした上で、他国の富と強さを手本にすることを提言しました。彼の提言は、李鴻章によって受け入れられ、新しい軍隊の編成に結びつき、最終的に太平軍に勝利しました。これは、西洋技術の導入がどれほど重要かを示す兆しでした。

「中体西用」という用語は、その後1898年に沈寿康の『匡時策』などで使われるようになり、張之洞の『勧学篇』でも言及されました。彼は「旧学は体、新学は用」と述べ、理論を強化しました。また、1921年には梁啓超が清代の学問に関する著書で中体西用を主導した人物として張之洞を位置づけました。

最新の動向

1980年代には、中華人民共和国で李沢厚が「西体中用」という概念を提唱しました。これは中体西用の考え方に倣ったもので、近代化を図る際の指針として注目を浴びました。

終わりに

中体西用は、清代末期の中国における技術革新の思考を示すものであり、ただの理念ではなく、当時の中国社会における変革の波を象徴する重要な概念です。この思想は、伝統を重んじながらも国が新たな時代に適応し、進化していく道しるべを提供しています。

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