梁啓超

梁啓超（りょう けいちょう）

梁啓超（1873年-1929年）は、清末から民初にかけて活躍した中国の思想家、ジャーナリスト、政治家です。字は卓如、号は任公、飲冰室主人など多数のペンネームを持ちました。建築家の梁思成、考古学者の梁思永はそれぞれ長男と次男にあたります。

生涯

生い立ち（1873-1895）

1873年、広東省の農村に生まれた梁啓超は、幼少期から学問に励みました。15歳で学海堂に入学し、考証学を修めます。17歳で科挙に合格し、その成績の優秀さから試験官の李端棻の従妹と婚約しました。

18歳になると、康有為と出会い、その思想に感銘を受けます。康有為の私塾である万木草堂で学び、公羊学と大同思想に触れ、その後は康有為の片腕として活動するようになりました。また、北京では譚嗣同と交流し、大同思想や王夫之の学問について語り合いました。

変法運動（1895-1898）

1895年、日[[清戦争]]の敗北と下関条約の内容に憤慨した梁啓超は、康有為とともに講和拒否運動を呼びかけました。この運動は「公車上書」として知られ、変法自強運動のきっかけとなりました。また、政治団体である強学会を結成しますが、政府の圧力によりすぐに解散を余儀なくされます。

1896年、梁啓超は上海で旬刊誌『時務報』の主筆となり、寄稿文「変法通議」などを通じて学校制度の必要性を説きました。その後、湖南の時務学堂で民権論を説いたことから、保守派によって弾圧を受けることになります。1898年には光緒帝の招聘を受けて立憲君主制を目指しますが、西太后らのクーデターによって失敗に終わります（戊戌の政変）。

日本亡命と言論活動（1898-1911）

戊戌の政変後、梁啓超は日本に亡命しました。東京では多くの知識人に歓迎され、横浜中華街を拠点に、言論活動を展開しました。

1898年には雑誌『清議報』を創刊し、清国民の意識改革を訴えました。また、東京大同中華学校や神戸中華同文学校の設立にも尽力しました。さらに、『新民叢報』や『新小説』などの雑誌も創刊し、亡命中の論説をまとめた『飲冰室文集類編』も出版しました。

亡命中の梁啓超は、日本の思潮や文化を積極的に吸収し、西欧の思想も学びました。福澤諭吉などの日本の啓蒙思想家からも大きな影響を受け、その思想を中国に紹介しました。また、この時期には革命思想も深め、当初は立憲君主制を支持していましたが、次第に共和国を目指すようになりました。

思想の変遷は激しく、革命派と対立したり、開明専制を主張したりしましたが、根底には中華民族の復興と近代的な国民国家の建設という理念がありました。

中華民国と政界活動（1912-1920）

14年間の亡命生活を経て、1912年に帰国した梁啓超は、袁世凱のもとで進歩党を組織しました。しかし、袁世凱が帝政を唱えたことに反対し、討袁軍を組織しました。その後、国会が回復すると憲法研究会を組織し、段祺瑞内閣では財務総長を務めました。1918年からはヴェルサイユ全権大使の顧問としてヨーロッパを視察しました。

晩年と思想活動（1921-1929）

第一次世界大戦後のヨーロッパの荒廃に衝撃を受けた梁啓超は、西欧文明を批判的に捉え、伝統的な中国思想の再評価へと向かいました。清華大学教授や北京図書館館長を務め、学術研究に没頭しました。マルクス主義に対しては批判的であり、中国の伝統に根ざした思想を追求しました。

1929年に病没し、広東、天津、北京に記念碑が建てられています。

思想・評価

梁啓超は、多くの和製漢語を中国語に導入したことでも知られています。その文章は多くの清末の若者に影響を与え、ジャーナリストとしても大きな足跡を残しました。

また、ヴォルテール、福澤諭吉、トルストイを「世界三大啓蒙思想家」として紹介しました。

彼の思想は、その変遷の激しさから、長らく評価が分かれていました。しかし、近年ではその業績が再評価され、中国近代史研究における重要な人物として扱われています。特に、国民国家の概念を中国に導入したこと、日本の文献を参考にした思想活動を展開したことなどが注目されています。

梁啓超自身も、思想の変遷が激しいことを自省していましたが、その軽快なフットワークこそが、新しい思想を中国に導入する上で大きな強みであったと言えるでしょう。

著作

梁啓超の著作は、『飲冰室合集』にまとめられています。主な著作には、『変法通議』、『戊戌政変記』、『新民説』などがあります。

参考文献

『梁啓超文三篇』
『譚嗣同伝』
『清代学術概論』
『原典中国近代思想史』
『新編原典中国近代思想史』
『李鴻章 清末政治家悲劇の生涯』
『新民説』
『梁啓超文集』
『梁啓超年譜長編』
『共同研究 梁啓超―西洋近代思想受容と明治日本』
『梁啓超―東アジア文明史の転換』
『近代中国の立憲構想 厳復・楊度・梁啓超と明治啓蒙思想』
『漢文脈の近代 清末＝明治の文学圏』
『梁啓超とジャーナリズム』
『日本亡命期の梁啓超』
「梁啓超における中国史叙述 －「専制」の進化と「政治」の基準（一、二）」
「梁啓超における中国国家体制の構想 : 「自治」と「聯邦制」を手がかりに」
「梁啓超的“革命”論 (伝統的精神文化からみた東アジア)」
「梁啓超の「文明」認識およびその変遷 (伝統的精神文化からみた東アジア)」
「梁啓超と日本 : 福沢諭吉の啓蒙思想との関連を中心に」

関連項目

康有為
福沢諭吉
ファン・ボイ・チャウ
神戸中華同文学校
横浜山手中華学校
世界四大文明

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