中国郵政

中国郵政（China Post）について

中国郵政（正式名称：中国邮政集团有限公司）は、中華人民共和国において郵便事業を主軸とする国有企業です。濃緑色をイメージカラーとし、郵便、銀行等の金融業務、宅配などの物流サービスを幅広く展開しています。

概要

1949年、中国共産党側の郵政組織が従来の中華郵政を吸収し発足しました。かつては「中国人民郵政」と呼ばれていました。1972年までは万国[[郵便連合]]（UPU）に加盟していませんでしたが、国際郵便の利用は可能でした。

2007年、郵政行政の監督管理を行う国家郵政局と、実質的な経営を行う中国郵政集団公司に分割されました。これにより、中国郵政集団公司は中央政府管理下で国務院財政部が出資する中央企業となりました。また、郵政事業の改組後、貯金部門は中国郵政儲蓄銀行として発足しました。

2015年には、一帯一路戦略に基づきロシアとの国際物流に関する協力文書に署名し、物流管理や農村部の電子商取引の課題に取り組み始めました。同年、中国企業連合会による「中国トップ500企業」で22位にランクインしました。

傘下の郵便局では、貯蓄と郵便の窓口が同居しているのが特徴です。

中国郵政集団有限公司の発足

2019年12月28日、中国郵政集団有限公司が正式に発足しました。これにより、社名が中国郵政集団公司から変更されました。制度改革後は中央が一元管理する単独出資企業となり、郵便、宅配・物流、金融、電子商取引（EC）を本業とし、多角化経営を目指しています。

過去には、1998年に郵便事業と電気通信事業、2005年には行政と企業に分割されました。その後、2007年に中国郵政貯蓄銀行、2010年には中国郵政速達物流股份有限公司が設立されました。郵貯銀行は2016年に香港証券取引所、2019年には上海証券取引所に上場を果たしています。

2020年には、以下の3つの主要な宅配サービス事業を展開する予定です。

宅配サービスを村に導入する3年計画
工場内物流、倉庫、配送の一体化や地域内サプライチェーンサービスの構築
海外への宅配事業の拡大と国際配送物流関連政策の推進

財政状況

1998年から2018年にかけて、中国郵政集団の営業収益は287億元から5,668億元に増加し、営業利益は179億元の赤字から468億元の黒字へと転換しました。2019年の売上高は1兆6,000万元（約25兆円）に達し、利益は9,600億元（約15兆円）と前年比30%の伸びを記録しました。これは中国国内総生産（GDP）の1割に相当します。

主要子会社

2018年時点での主要な子会社は以下の通りです。

中国郵政儲蓄銀行（銀行業）
中国邮政速递物流股份有限公司（宅配業）
中邮人寿保险股份有限公司（保険業）
中邮证券有限责任公司（証券業）
中国集邮总公司（切手公社）
中国郵政集団公司(情報技術局、研究院）
邮政科学研究规划院（全体計画、工学設計、企業管理、物流設備開発、端末機器開発、品質検査、標準化策定など）
中国邮政集团公司上海研究院
石家荘郵便通信技術学院（職業訓練専門学校）
中国邮政集团公司邮票印制局（印刷局）
中国郵政報社（新聞出版社）

EC事業成長による取扱量の増加

1949年から2018年までの70年間で、中国郵便の総売り上げは1億6,000万元から1兆2,345億元へと7,700倍に成長しました。宅配取扱量も1980年代の153万個から2018年の507億個へと急拡大し、30年間の年間平均成長率は41.5％に達しました。

2019年の調査では、中国市場は世界で最も成長が速い新興市場とされています。一人当たりの年間受け取り個数では、アメリカが21個、ドイツが24個、イギリスが22個ですが、他のヨーロッパ諸国や発展途上国ではさらに少ない状況です。

中国のEC市場は日本の10倍の規模であり、郵便局の整備とメールショッピングサイトの普及により、人口カバー率は95％を超えています。年間利用者数は1,000億人を超え、オンラインショッピングの取引規模は7兆元を超えています。農産物や工業製品の流通も活発で、年間平均100億個のペースで成長が続いています。

この成長を牽引しているのは、アリババグループの「天猫（Tmall）」「淘宝網」、京東商城の「JD.com」、拼多多の「ピンドウドウ」といった大規模なオンライン販売プラットフォームです。

淘宝網、天猫、JD.comの流通取引総額は、それぞれ数十億ドルに達しています。特に拼多多は、急成長を遂げ、注文量は2019年上半期に70億を超えました。

祝祭日には注文が殺到し、物流量が爆発的に増加します。特に「独身の日」の売り上げは毎年過去最高を記録しており、2018年にはアリババグループだけで1日あたり10億件以上の注文がありました。

農村部での宅配需要も高まっており、ビジネス成長率は都市部を上回っています。

新型肺炎への対応

湖北省武漢市で発生した新型肺炎に対し、中国郵政当局は緊急通達を出し、医療品や防疫物資、生活必需品の優先配達を行いました。航空路の開設、トラックや航空機による物資輸送を行い、需要のひっ迫を緩和させました。また、ウイルス感染を抑えるため、「非接触配送サービス」を開始しました。

海外からも防疫物資が調達され、フェデックスなどの国際的な物流会社も緊急支援物資の輸送に協力しました。中国郵政は、資金を必要とする企業やワクチン開発機関に融資を行い、医療品購入のための運転資金を迅速に供給しました。

しかし、感染拡大により国際郵便（EMS）の大幅な遅延が発生し、万国[[郵便連合]]は中国向け郵便物の受付を停止する国があることを発表しました。

中国政府は経済への影響を防ぐため、資金供給を行いましたが、サプライチェーンの寸断など、予断を許さない状況が続いています。

その他

2010年、日本郵政グループは中国郵政と小口物流で提携し、ECサイトを利用する中国消費者向けに低価格の新サービスを提供しています。

2019年には、中国郵政が独自開発したスマート無人配達車が商用運行を開始しました。この無人車は、貨物ロッカーを備え、全天候型で運行可能です。

2020年の報告では、顧客満足度は77.3%に向上し、主要地域での72時間以内の配達完了率は79.3%となっています。

主要宅配業者に対する満足度では、順豊速運（SFエクスプレス）が最も高く、中国郵政速逓物流（EMS）が続いています。

香港とマカオの郵便事業は中国郵政から独立しており、それぞれ香港郵政と澳門郵政局が運営しています。

中国切手は、1992年まで「中国人民郵政」と表示されていましたが、以降は英文で「CHINA」と表示されるようになりました。

前身である中華郵政は、中華民国の領域（台澎金馬）の郵政組織として現存しています。

郵便料金（中国国内）

2006年11月15日以降の料金は以下の通りです。

100グラム以内：20グラムまで0.8元、20グラムごとに1.2元追加
100グラム以上：100グラムまで1.2元、100グラムごとに2.0元
郵便葉書：0.8元

関連事項

中国貨運郵政航空
一帯一路
トランス＝ユーラシア・ロジスティクス

外部リンク

中国郵政集団公司 公式ウェブサイト（中国語）
中国邮政速递物流股份有限公司（EMS）公式ウェブサイト（中国語）
中邮人寿保险股份有限公司（保険）公式ウェブサイト（中国語）
中邮证券有限责任公司（証券）公式ウェブサイト（中国語）
中国集邮总公司（切手公社）公式ウェブサイト（中国語）
邮政科学研究规划院（研究所）公式ウェブサイト（中国語）

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