中華郵政

中華郵政（ちゅうかゆうせい）

中華郵政は、台湾（中華民国）において郵便事業および郵便貯金事業を行う公共企業です。民間では「郵局（郵便局）」とも呼ばれています。

概要

中華郵政は、もともと中華民国政府が運営する交通部郵政総局でしたが、2003年1月1日に組織改革により公共企業化し、交通部が100%出資する株式会社となりました。日本の郵政事業民営化とは異なり、郵便事業と郵便貯金事業は分離されていません。

郵政事業の開業日は、清朝政府の大清郵政総局が設立された1896年3月20日とされており、この日は台湾における郵政記念日となっています。2016年には、郵政120周年記念事業が開催されました。

台湾における郵政事業の歴史

第二次世界大戦前

1888年：清朝が台湾に郵便局を設立し、台湾での郵便事業が始まりました。
1895年：日本が台湾を清朝より併合し、台湾総督府を設置。日本軍が台湾全土に野戦郵便局を23箇所設置しました。同時期に「台湾民主国」が独自の郵便事業を行い切手を発行しましたが、短期間で終了しました。
1896年：郵便條例が施行され、野戦郵便局が民政局通信課に移管され、電信部門と合併しました。
1900年：郵便貯金業務が開始されました。
1901年：通信課が通信局に改称されました。
[1914年]]：万国[[郵便連合]に加盟しました。
1919年：通信局が逓信局に改称されました。
1923年：皇太子（後の昭和天皇）の台湾訪問を記念して、新高山（玉山）を描いた記念切手が発行されました。これは事実上の台湾地方切手となりました。
1924年：逓信局と鉄道部が合併し交通局となり、その下に逓信部が置かれました。この体制は第二次世界大戦終結まで続きました。
1935年：内台航空郵便業務（福岡 - 那覇 - 台北）が開始されました。
1936年：島内定期航空郵便業務が開始され、西部線（台北 - 台中 - 高雄）と東部線（台北 - 宜蘭 - 花蓮港）が開設されました。

戦後

1945年8月15日：日本がポツダム宣言を受諾し降伏。
1945年10月21日：日本切手の在庫払底に対応するため、3、5、10銭の台湾地方切手が発行されました。
1945年11月3日：台湾の行政権が中華民国政府に移管され、郵政事業も移管。上記の台湾地方切手は発売停止となりました。
1945年11月4日：前述の台湾地方切手の未発行分を含む9種に「中華民国台湾省」と加刷された暫定切手が発行されました。
1946年6月：中華郵政が発行した切手が発売されるようになりました。ただし、大陸との通貨制度の違いから、切手には「限台湾貼用」との表記がありました。
1949年：中国国民党が国共内戦に敗北し台湾に逃れました。電信部門が分離され、交通部郵政総局が管轄する中華民国台湾郵政管理局となりました。
1972年：国際機関からの脱退の一環として、中華郵政が万国[[郵便連合]]から脱退しました。

21世紀

2003年：国家機関から公共企業に改組し、中華郵政となりました。
2007年：陳水扁総統が台湾正名政策を推進するため、中華郵政を「台湾郵政」に改名すると発表。中華郵政工会が反対運動を行うも、「台湾郵政」に改名されました。
2008年：台湾郵政が再び中華郵政に改名されました。

特殊切手、消印

寄附金付切手

中華民国は、中国本土時代に3回、台湾に移ってから3回、寄附金付切手を発行しています。台湾で最初の寄附金付切手は、1954年に北ベトナム難民を支援するために発行されたものです。

1954年：北ベトナム難民を援助するための寄附金付切手を発行。
1999年：台湾大地震の被災者支援のための寄附金付切手を発行。
2009年：台風8号による被災者支援のための寄附金付切手を発行。

消印

2015年8月、台風で傾いた郵便ポストが「微笑萌郵筒」として人気となり、期間限定で可愛い消印（萌郵戳）が使用されました。

オリジナル切手

写真データを持ち込むことで、オリジナルの切手を作成できます。ただし、写真部分に中華郵政の文字や額面を印字することはできません。

郵便番号(郵遞區號)

郵便番号は、3桁、5桁（3+2）、6桁（3+3）のいずれを使用しても構いません。かつては、封筒の裏に3桁の郵便番号一覧表が記載されていました。

5桁(3+2): 1970年3月20日から実施。前3桁は行政区に割り当てられています。後ろ2桁の99は私書箱を意味しますが、郵便局を特定できないため、私書箱番号で区別します。
6桁(3+3): 2020年3月3日から実施。大口顧客に対して個別番号を割り当てることが可能になりました。

業務効率化

自動区分機

中華郵政は、1970年代から自動区分機を導入し、業務の効率化を図っています。近年では、OCRによる中国語住所の識別も可能になりました。

1970年：最初の区分機3台を台北、高雄郵局に設置。
1976年：米国製包裹分揀機を台北包裏中心に設置。
1979年：米国製信函分揀機2台を桃園航空郵件処理中心に設置。
2017年：臺中、高雄、臺南郵件處理中心の設備を更新。
桃園龜山に郵政物流園區、訓練中心を新設（2024年6月完工予定）。

中華郵政カラー(緑色)

中華郵政の代表的な色は緑色で、制服、郵便配達車、郵便ポストはすべて緑色です（速達ポストは赤色）。緑色は平和の象徴であり、青春、繁茂、安全、生き生きとした様子を表しています。この色は、清朝末期に郵政を管轄していたフランス人Alexandre Théophile Piryが、フランス郵政の色を採用したことに由来します。

現在も、中華郵政職員は緑色の服装であり、「綠衣使者」または「綠衣天使」とも呼ばれています。警察官は「人民保母」と呼ばれています。

2021年 夏服デザイン

實踐大學がデザインしたものが採用され、中華郵政の緑色をメインカラーとし、実用的な配慮がなされています。

採用試験

體能測驗

専門職の採用試験では、30kgの郵便袋を運ぶ体力試験が行われます。

郵遞業務(配達員)

配達員の応募には、普通重機（バイク250cc以下）および普通小型車の免許が必要で、年齢制限はありません。

配達車両(郵差車)

中華郵政は、電動スクーター、モータバイク、オフロードバイク、自転車など、さまざまな配達車両を使用しています。

電動スクーター：2018年より導入。
モータバイク: 1974年から郵政仕様の「野狼125」を使用。
オフロードバイク：冬季に雪が積もる地域での配達に使用。
自転車：初期のものは郵政博物館に展示されています。

郵便故事

戦前住所や不完全な住所宛の郵便物が、配達員の努力や報道機関の協力によって配達される事例があり、「海角七號真實版」としてニュースになることがあります。

日本との関係

2024年10月29日、日本[[郵便]]九州支社と姉妹郵便局協定を結び、台北市内の2つの郵便局と熊本県内の4つの郵便局が姉妹郵便局となりました。

備考

かつては、中国全土の地図や鄭成功の肖像などを描いた切手が発行されていました。
台湾の切手には「中華民国郵票」と表記されていますが、横書きの場合、1997年までに発行された切手は右書き表記でした。
2007年に「台湾郵政」に改名された際、切手の国名表記も「台湾」に変更されましたが、2008年に「中華郵政」に戻された際に、国名表記も「REPUBLIC OF CHINA（TAIWAN）」に変更されました。
若年層へのアピールにも積極的で、制服や切手のデザインを公募したことがあります。
中国本土では、中国郵政が郵便事業を行っています。
中華郵政は[万国郵便連合]を脱退していますが、国際[[郵便]]は可能です。
台北郵局は、日本統治時代に建造された歴史的な建物です。
切手や葉書に端数が付いている場合、自動販売機では複数枚単位での購入になることがあります。
切手収集家の間では、中華郵政が発行する切手を「台湾切手」と呼ぶことがあります。

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