トランス＝ユーラシア・ロジスティクス

トランス＝ユーラシア・ロジスティクス：現代のシルクロード

トランス＝ユーラシア・ロジスティクスは、中国とヨーロッパを結ぶユーラシア大陸横断の貨物鉄道輸送網です。中国政府の「一帯一路」構想の中核を担い、ドイツ鉄道、ロシア鉄道、中国国家鉄路集団の合弁事業として運営されています。この鉄道網は、日本などからの貨物も含む、航空・海上輸送との積み替え貨物を、中国からロシア、モンゴル、カザフスタンを経由し、ドイツなど西欧諸国まで輸送します。

歴史

2008年10月に試験運行が開始され、富士通やシーメンスのコンピューターを積載した貨物列車が中国の湘潭市からドイツのハンブルクまで17日間で到着しました。2011年3月には正式な営業運転が開始され、重慶市からヨーロッパへ向かう貨物列車が運行を開始しました。この事業には、ドイツのポルツークやコンビファケア、ロシアのトランスコンテナなどの複合一貫輸送プロバイダーも参加しています。

1990年代には、連雲港 - アラ山口 - ロッテルダム間のルートが「チャイナ・ランド・ブリッジ（CLB）」や「Trans-China Railway（TCR）」として知られ、ボストチヌイ港からシベリア鉄道を経由するモスクワや欧州向けの路線は「シベリア・ランド・ブリッジ（SLB）」と呼ばれていました。2011年3月に開始された重慶-デュースブルク路線は「渝新欧（号）」と名付けられました。

概要

シベリア・ランド・ブリッジは、アジアとヨーロッパ間の貨物輸送を目的として始まりました。1980年代には海運運賃の高騰により鉄道輸送が最盛期を迎えましたが、ソビエト連邦の崩壊後は輸送品質の低下や運賃の高騰により、海上輸送が主流となりました。しかし、ロシア政府は国家予算を投入して運行管理のデジタル化やトレーサビリティの確立を進め、輸送の安定性と品質向上に努めました。

2008年に設立されたトランス＝ユーラシア・ロジスティクスは、2013年に習近平が提唱した「一帯一路」構想の中核事業として位置づけられています。2017年には、中国、ベラルーシ、ドイツ、カザフスタン、モンゴル、ポーランド、ロシアの鉄道部門が「中欧鉄道貨物協力の深化に関する協定」に署名し、この動きを加速させました。

運営と実績

2019年6月には、ロシア鉄道、ベラルーシ鉄道、カザフスタン鉄道の共同出資による「統一輸送物流会社-ユーラシア鉄道アライアンス（OTLK ERA）」が設立され、経営の効率化と輸送能力の増強が図られています。輸送実績は年々増加しており、2015年の20フィートコンテナ48,000本から、2019年には62,622本にまで拡大しました。

中国を出発したコンテナ列車は、モンゴル縦貫鉄道やシベリア鉄道を経由し、ベラルーシとポーランドを通ってドイツへと向かいます。このルートは「ユーラシア・ランドブリッジ」とも呼ばれています。積み替え地点では、中国とカザフスタンの国境にあるドストゥク駅やアルマトイ州のアルティンコリ駅で、標準軌から広軌へのコンテナ転換が行われています。

路線

主要路線は、満州里経由の北ルート、エレンホト経由の中央ルート、アラ山口経由の西ルートに大別されます。特に、重慶や成都発の西ルートが輸送全体の7割を占めています。2020年5月時点で、中国の71都市とロシア、東欧、欧州の20か国90都市以上がこの路線網で結ばれています。

主要な長距離国際貨物列車としては、義烏-マドリード線や義烏-リエージュ線などがあります。また、武漢、重慶、成都、鄭州、西安など、中国各地の都市からヨーロッパ各地への直通路線が多数運行されています。

発展

運行本数は年々増加しており、2011年の17本から、2020年には12,400本にまで成長しました。物量も20フィートコンテナ換算で113万5000TEUに達し、往復路の積載率は98.3%となっています。特に、成都と重慶からの貨物が全体の4割を占めています。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、航空・海上輸送が停滞したため、その代替手段として鉄道輸送が利用されたことが、この成長を後押ししました。また、中国ラオス鉄道の開通により、東南アジア方面への輸送ルートも拡大しつつあります。

新たな展開

近年、日新などの企業が「日中欧Sea&Rail一貫輸送サービス」を開始し、日本から中国を経由してヨーロッパまでの新たな輸送ルートが構築されています。また、国土交通省主導による日本からウラジオストク経由の輸送試験も行われ、第三の輸送手段としての可能性が探られています。

2020年には、トルコを経由して中国の西安に到達する貨物列車も運行され、歴史的なシルクロードをなぞるルートが復活しました。さらに、2021年には、マースクによって日本初の貨物のみで構成されたブロックトレインが運行され、輸送ルートの多様化が進んでいます。

まとめ

トランス＝ユーラシア・ロジスティクスは、現代のシルクロードとも呼ばれるユーラシア大陸横断の貨物鉄道輸送網であり、その重要性はますます高まっています。海上輸送の代替手段として、また、国際貿易の活性化に貢献する存在として、今後もその発展が期待されます。

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