中央映画撮影所

中央映画撮影所：調布に存在した映画スタジオの興亡

中央映画撮影所は、1953年から1950年代末にかけて、東京都調布市に存在した映画スタジオです。最盛期には独立プロの映画製作を支え、数々の名作がここで生まれました。しかし、その歴史は短く、1950年代後半にはその役割を終えました。

開設と最盛期

中央映画撮影所は、もともと昭和鍛工会社の軍需工場跡地に建設されました。当初は国際テレビがテレビ映画用スタジオとして建設を進めていましたが、機材導入前に頓挫。その後、映画プロデューサーの伊藤武郎が機材を導入し、1953年11月12日に撮影所として正式に開設されました。

開設当初は、150坪の第1、第2スタジオと、翌年には180坪の第3スタジオに加え、ダビングルーム、大道具工房、控室、3カ所のオープンセット用地（各600坪規模）を備えるなど、当時としては充実した設備を誇っていました。中央映画自身の作品制作の拠点としてだけでなく、独立プロの映画製作を支えるレンタルスタジオとしても活用され、活気に満ちていました。

立地

撮影所は、京王線上石原駅（現在の西調布駅）から南西約800mに位置し、当時の表記で下石原1078番地（現在の調布市多摩川1丁目8番地付近）にありました。敷地面積は約12,000㎡。周辺には東宝調布スポーツパーク（ゴルフ場、テニスコート）、角川大映撮影所、日活撮影所、東京現像所など、映画関連施設が集積しており、当時の調布が映画産業の一大拠点であったことを物語っています。

独立プロ運動の衰退と撮影所の終焉

1950年代中頃から、独立プロによる映画製作運動が衰退し始めると、撮影所もその影響を受けました。1956年5月からは、不動産を所有していた中島工業が管理を引き継ぎ、調布映画撮影所と改称。レンタルスタジオとして運営を続けましたが、1959年末頃には富国生命に用地が売却され、その歴史に幕を閉じました。

撮影された主な作品

中央映画撮影所では、数多くの名作映画が撮影されました。以下に主な作品を挙げます。

「ここに泉あり」（1955年/監督：今井正）
「愛すればこそ」（1955年/監督：吉村公三郎、今井正、山本薩夫）
「姉妹」（1955年/監督：家城巳代治）
「由紀子」（1955年/監督：今井正）
「真昼の暗黒」（1956年/監督：今井正）
「あやに愛しき」（1956年/監督：宇野重吉）
「こぶしの花の咲くころ」（1956年/監督：家城巳代治）
「異母兄弟」（1957年/監督：家城巳代治）
「挽歌」（1957年/監督：五所平之助）
「怒りの孤島」（1958年/監督：久松静児）
「悪徳」（1958年/監督･主演：佐分利信）
「赤い陣羽織」（1958年/監督：山本薩夫）
* 「人間の壁」（1959年/監督：山本薩夫）

これらの作品は、当時の映画界を代表する監督や俳優たちが集結し、社会派ドラマから文芸作品まで、幅広いジャンルの映画が制作されました。

備考

撮影所の母体となったのは、1954年8月に設立された中央映画です。また、撮影所の敷地は、第二次世界大戦中に戦車のキャタピラなどを製造していた軍需工場の一部でした。戦後、中島工業がガス製造所として所有していた工場をスタジオに用途変更しました。

撮影所には2本の煙突があり、「煙突のある撮影所」と呼ばれていました。現在、跡地は関東財務局西調布住宅となっています。

まとめ

中央映画撮影所は、短期間ながらも日本の映画史に重要な足跡を残したスタジオでした。独立プロによる映画製作を支え、数々の名作を生み出した一方で、時代の変化とともにその役割を終え、姿を消しました。しかし、その存在は、日本の映画史を語る上で決して忘れてはならないものと言えるでしょう。

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