中央神学校

概要

中央神学校（ちゅうおうしんがこう）は、1927年から1942年まで日本の神戸市に存在した、改革派教会の伝統に立つ聖書信仰に基づく高等教育機関です。激動の時代において、確固たる神学的立場と信仰的実践を貫きました。

沿革

この神学校の設立は、1927年に遡ります。米国南長老ミッションが運営していた神戸神学校と、米国北長老ミッションが設立した大阪神学院が統合される形で誕生しました。初代校長には、識見と信仰に優れたサミュエル・フルトンが就任しました。

設立当初から、教授陣は国内外の優れた神学者で構成されていました。アメリカ人宣教師としては、マイアース、オストラム、チャップマンらが教鞭を執り、日本人教授には溝口悦次、今村好太郎、桑田繁太郎、岡田稔といった献身的な奉仕者たちが名を連ねました。その後、1937年には松尾武、1941年には田中剛二が教授団に加わっています。

教育内容は、合併母体の一つである神戸神学校の路線を踏襲し、聖書と改革派神学に基づいた堅固なものでした。当時の日本では国家神道への体制が強化される中にあっても、中央神学校は信仰の自由と良心に従うことを重んじました。具体的には、教育勅語の奉読や御真影への敬礼、宮城遥拝、さらには神社への参拝といった国家神道に基づく行為への参加を、一貫して拒否し続けました。

しかし、日中戦争を経て太平洋戦争へと時代が進むにつれ、日本のキリスト教会に対する当局からの圧力は増大していきました。中央神学校も例外ではなく、その非妥協的な信仰姿勢は弾圧の対象となりました。特に、太平洋戦争が始まった後には、マイアースをはじめとする複数のアメリカ人宣教師たちが敵性国民として逮捕されるなど、厳しい状況に追い込まれました。こうした外部からの強い圧力と運営の困難さから、中央神学校は1942年3月をもってやむなく閉校することとなりました。

閉校に際し、学校の後事は岡田稔教授に託されました。岡田は中央神学校の精神を受け継ぎ、同校の閉校直後に昭和神学研究所を設立し、神学の研究活動を細々と続けました。一方、学校の土地や校舎といった資産は、日本基督教団の敵産管理委員会によって強制的に接収されてしまいました。残された学生たちは、他の神学校、主に日本神学校へと転校せざるを得ませんでした。

中央神学校は短い歴史の中で閉校しましたが、その教育と精神は後世に引き継がれました。第二次世界大戦終結後、中央神学校で学んだ卒業生たちは、戦後の日本のキリスト教界、特に改革派教会の再建と発展に大きな役割を果たしました。彼らは日本基督改革派教会や神戸改革派神学校の設立に中心的に関わり、また、戦後の新しい日本語訳聖書である新改訳聖書の翻訳事業においても重要な貢献をしました。

神学的な特色

中央神学校の神学は、ウェストミンスター信仰告白に明確に示されているような、聖書の権威を重んじる強い福音主義、改革派神学の立場を堅く保持していました。この神学的な確固たる土台が、国家神道への妥協を拒否するという信仰的な実践にも繋がっていたと言えます。

また、同校の特色として、教授たちと学生たちの間に非常に親密な関係があったことが挙げられます。これは単なる教育関係に留まらず、信仰生活全体における師弟関係、あるいは家族のような絆が育まれていたことを示唆しており、学生たちの信仰形成に大きな影響を与えたと考えられます。

そして、最も際立った特色の一つは、当時の日本の全体主義的な風潮や国家神道に対する明確な非妥協的な態度でした。この姿勢は、聖書に基づく信仰の独自性と公共の領域における教会の役割を深く理解していたことの現れであり、現代においてもその勇気ある態度は高く評価されています。

主な卒業生

中央神学校で学んだ学生たちの中からは、戦後の教会や神学界において指導的な役割を果たす人物が多数輩出されました。主な卒業生として、以下の方々が挙げられます。

後藤光三
松田輝一
* 野田辰夫

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